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社説「島伝い」

2018年1月26日

変化の先に目指すのは?

「周りが変化している中、自分たちだけが何も変わらないわけにはいかない」と前回新年号の本欄でも書きましたが、昨今のビジネス環境の変化から、そういった意識を持つ方はかなりいることと思います。では、この先自分たちがどう変わっていくべきか、はっきり言える方はどのぐらいいるでしょうか。

 

すぐに答えられる場合は、自分たちの強みや弱み、課題点など現状を把握し、何を変えるのか、そのために何をいつまでに行うのか、その結果何が実現されるのか、目標とそこにたどり着くまでの道筋がきちんと描けているのでしょう。事業計画やプロジェクト計画などの形で可視化され、社員間でも共有されていて、既に取り組みが進行中という場合もあるかもしれません。

 

しかし、変わるべきとは分かっているものの、そこからどう踏み出せばよいかまだ見えない、という場合もあるでしょう。ヒントを見つける方法の一つは、自分たちと同じような問題や課題に向き合った事例から学ぶこと。シンガポールは、近年の糖尿病患者の増加や、少子高齢化への対策を学ぶべく、日本やオーストラリア、フィンランドなどへの視察を行っています。シンガポールからの視察参加者は、自分たちが抱えるどの問題や課題を解決するために現地で何を見たいのか、目的意識がはっきりしているため、視察の視点も深いとのこと。そのため、一度の視察で多くの有益な情報を得ることができ、シンガポールに戻った後も目指す目標に向けた行動にしっかりつなげているようです。

 

かつては日本も同じようなことを行ってきました。明治時代や、第二次世界大戦後など、多くの人々が主に欧米諸国へ行って最新の技術や知識を学び、日本に持ち帰って、自分たちのものにしながら大きな経済成長を遂げました。今は世界各国から人々を受け入れ、技術や知識を学ぶ場を提供する立場にもありますが、多くの国々が発展している今日、日本が他の国々で実践されている方法から学んで改善できるポイントもたくさんあるでしょう。海外に住んで活動していると、そういったポイントを日本に住んでいる時以上に知る機会もあるはずです。

 

大事なことは、何かを変えることで、いつまでにどうなることを目指すのか、着地点のイメージを持つこと。着地点が描けていれば、そのための変化への取り組みの質もより高いものになるでしょう。例えば半年後や1年後に自分たちがどのような姿でありたいのか、シンガポールにいるからこそ起こせる変化で、目指す着地点にたどりつけるようにしたいものです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.330(2018年2月1日発行)」に掲載されたものです。

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