シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP上手くいかない本当の理由

社説「島伝い」

2017年1月23日

上手くいかない本当の理由

子供の頃から英語を日常的に使う環境にはなかった多くの日本人にとって、仕事の話を英語だけで進めるのはなかなかハードルが高いものです。英語ネイティブを相手にした交渉が不首尾に終わり、つい「日本語が通じる相手だったらこうはならなかった」と思うこともあるでしょう。しかし、結果の悪さは本当に英語が原因なのでしょうか。

 

文法的に正しいきれいな文を英語で書ける人でも、会話になると苦手意識が強く出てしまう、というのも日本人には珍しいことではありません。しかしよく言われるように、英語はあくまでもコミュニケーションの手段の一つ。大事なのは、相手に自分のメッセージをわかりやすく伝えられること、そして、相手のメッセージをきちんと受け取れること。つまり、コミュニケーション力です。

 

同じ日本語を話す者同士であっても、どちらかのコミュニケーション力が低ければ、やり取りがうまく行かないのは実は同じ。相手の話をろくに聞かずに一方的な話に終始したり、自分にとって面白くない方向に話が行った時に感情的に言い返したりしていては、いずれの言語であってもコミュニケーションは成立し難くなります。話を聞く用意ができていない相手には、いくらわかりやすく話そうと試みても無駄に終わるでしょう。

 

一方、お世辞にも上手とは言えない英語を話しながら、英語で話をまとめ、相手との信頼関係をしっかり築ける人がいます。成果を上げられるのは、やはりコミュニケーション力の高さ。特にシンガポールでは、英語でのちょっとした誤りは寛容に受け入れられる場合が多く、英語に少々自信がなくても、コミュニケーション力でカバーしてチャンスを掴むことが十分可能です。

 

コミュニケーションが上手くいかない場合、どちらかの理解力や言語力に問題があるケースももちろんあるでしょう。しかし多くの場合、解決への鍵を握っているのは、前向きに相手の話を聞き、丁寧に伝えようとしているかといった、コミュニケーションに対する姿勢なのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.317(2017年1月23日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP上手くいかない本当の理由