2007年11月19日
ググレカス
『電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。』『ステルスマーケティング』『あのね商法』――ぱっと見てすぐにおわかりになったでしょうか。『電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。』は昨年11月、銚子電鉄の公式サイトトップページに掲載されたメッセージ。経営難で法定検査の費用捻出に苦慮した同社が、『ぬれ煎餅』や鉄道グッズなど同社販売商品の購入をお客様にお願いしたい、と社長・従業員連名で掲載、それが掲示板サイトなどで大反響を呼び、全国から問合せや注文が相次いだそうです。おかげで、同社は修理が必要だった車両3台を今年無事に修理できたとのこと。『ステルスマーケティング』は、口コミによる宣伝効果を利用するマーケティング手法のひとつで、例えば関係者が、商品やサービスとはあたかも無関係かのように装い、ブログなどで好意的に紹介するといった手ロのこと。『あのね商法』は、途中まで見せておいて、結末や続きを見たければ商品を買ってください、という商法。某アニメ番組のテレビ放映版最終回で、主人公が画面に向かって「あのね…」と何か言いかけたまま終了、続きは後日発売のDVDに収録された、というのが由来だそうです。
上記の3語に加えて『アタシ、もうアベしちゃおうかな』(9月の安倍元首相電撃退任を受けて)、『ゴルァ電』(苦情電話のこと)、『ググレカス』(自分でろくに調べもしないですぐ人にきく人間に対して)、『ワンモアセッ』(某エクササイズDVDでインストラクターがよく使うフレーズ)などなど、『はてなダイアリー』のキーワードから97語が『現代用語の基礎知識2008』(自由国民社)に収録されるそうです。
今回選ばれた97語をざっと見た率直な感想は「なんじゃ、こりゃ。」その多くに、格式、伝統、しきたり、言葉、責任、他人の気持ち、命…いろんなものが軽んじられている現代の日本の世相が、端的に現れているような気がしてなりません。
日本語は、外国人にとって修得が難しい言語のひとつとされますが、我々のように海外で生活している日本人にとっても、そのうち日本で使われている日本語が難解な言語になってしまうのではないか――そう危惧するのは、考えすぎでしょうか。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.110(2007年11月19日発行)」に掲載されたものです。