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社説「島伝い」

2009年8月17日

守るべきラインはある

現在バハマで開催中のミス・ユニバース世界大会に日本代表として宮坂絵美里さんが出場していますが、出発直前の7月下旬に壮行会で披露された彼女のナショナル・コスチュームが非難を浴び、ここシンガポールでも地元紙に写真が掲載されるなど、日本国外からも注目を浴びる事態となりました。

 
着物の裾が腰に近い高さにまで上げられ、ピンクのガーターベルトと脚全体を露出した姿に、素材協力として帯を提供した呉服店や職人は「あのデザインを知っていれば提供しなかった」「変更しない限り使用を認めない」とカンカン。ミス・ユニバースと言えば、世界各国から選ばれた女性たちが外見の美しさ、知性、感性、人間性、社会性などさまざまな面で競い合う名誉ある舞台。そこで日本の伝統文化である着物の良さを伝えてもらいたい、という思いで協力した呉服店や職人にしてみれば、上記の抗議も当然でしょう。

 
着物として「ありえない」短い丈は、98年からミス・ユニバース・ジャパンのナショナル・ディレクターを務めているフランス人女性の意向が強く反映されたものとのこと。2006年世界大会第2位の知花くらら、2007年世界大会優勝の森理世を生み出し、そのプロデュース力が高く評価されていた彼女ですが、今回ばかりは「やり過ぎ」との非難は免れないでしょう。

 
着物にも流行があり、色や柄、素材などさまざまな変化があります。それでも、着物としての型といった基本を守っているからこそ、従来に無い新しい素材や柄が取り入れられても着物として認められ、おしゃれとして楽しまれます。今回は、着物として守るべきラインが無視されたため、着物や日本文化への侮辱だという非難を受けることになってしまいました。

 

 

世界大会本番では、丈も元のデザイン通りになり、「着物をアレンジした衣裳」として評価される形に収まったようですが、変更前の衣裳の写真が日本はもとより世界中に出回り、ミス・ユニバース日本代表がポルノ女優を見るかのような目で見られてしまったことも事実。このようなことが起きる日本の現状を、私達も真剣に捉えて考えるべきでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.151(2009年08月17日発行)」に掲載されたものです。

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