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社説「島伝い」

2010年1月18日

意図的でなければ良い?

小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる資金の流れが問題として大きく取沙汰されています。小沢氏の公設第1秘書大久保隆規被告が西松建設からの献金問題で公判中でもあり、厳しい批判が相次いでいます。

 
しかし、小沢氏本人は、「法に触れるようなことはしたつもりはない」とし、「国民の皆さんも理解していることと思う」、と民主党愛知県連パーティーに出席した際のスピーチの中で述べています。その件を切り出した言葉も「わたくしごとで若干、おわびをしたい」でした。数十億円にのぼる可能性のある政治献金疑惑により起きている一連の騒動に対して「若干わびる」と表現すること自体、問題を真摯に捉えていない、もっと言えば捉える気もないことが端的に表れているのではないでしょうか。

 
昨年の衆議院総選挙後にもこの欄で、政権交代は民主党支持ではなく、現状打破につながる変化を求める国民が当時の与党以外を選んだ結果に過ぎない、ということを述べましたが、少なくとも小沢氏にその理解はなかったようです。

 
日本は、その長い歴史と積み重ね、地理的条件などから国としての体を保ち続けていますが、ここ20年ほどはベクトルが定まらないまま、立ち上がっては転び、また立ち上がってはまた転び、と足踏み状態が続いています。国としての方向性をリーダーが国民にも明確に示し、40年余りという短期間で大きな成長を遂げたシンガポールとはあまりにも対照的です。

 
東京地検特捜部の任意聴取にも応じられないほど多忙だったはずの小沢氏ですが、10日には囲碁の若手名人と対局していたことが報じられました。この優先順位の付け方は、ビジネスマンにとって格好の「悪い手本」と言えます。法に触れるようなことをしたつもりがなければ、任意聴取に快く応じて早期に問題解決を図ることが、日本という国の与党の長としてやるべきことだったのではないでしょうか。

 
国を率いるトップであるなら、一連の疑惑に対する明確な説明を国民にもわかる形ですべきでしょう。続投するべきかどうかは、その説明でおのずと解が出るはずです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.160(2010年01月18日発行)」に掲載されたものです。

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