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社説「島伝い」

2011年6月6日

決断力の違い

5月7日の総選挙でグループ選挙区では初めて野党が与党を破ったわずか1週間後、リー・クアンユー顧問相とゴー・チョクトン上級相が揃って辞意を表明しました。今回の総選挙で改めて浮き彫りになった若年層からの不満や時代の変化を素早く読み取り、党としてだけでなく国の未来を考えた上でためらうことなく判断を下した、その決断の早さには改めて脱帽しました。初代首相であるリー氏はいわずと知れたシンガポール建国の父。リー氏と、その意思を受けて第2代大統領を14年間務めたゴー氏とが揃って内閣を去るということは、シンガポール国内のみならず海外にも世代交代を強く印象付けました。

 
かたや有権者の7割が菅首相の退任を求めていると地元紙でも報じられた日本では、6月1日夕方、内閣不信任案が自民党など野党3党から提出されました。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた被災地の復興と福島での原発事故の対応に国として一丸となって立ち向かうべき時に、そんなことをしている場合なのか、というのが日本を外から見ている者としての偽らざる気持ちです。シンガポールが大きな節目を迎えてベクトルの先を上昇に向ける判断を下したのとは対照的で、このままでは、いかに日本の方が先に発展してきたと言っても一人当たりの国民総生産だけでなく他の領域でもシンガポールに抜き去られるのは時間の問題でしょう。

 
首領のやり方がまずければ、批判するばかりで足を引っ張るのでなく、是正して良い方向に持って行こうとする力が働けばまだ良いのですが、今は与党である民主党内でさえ分裂状態。シンガポールの政治の動きや決断の早さを目の当たりにすると、日本の情けない姿がますます目に付いてしまいます。

 
シンガポールに在住する方々の多くも、今回の総選挙やその後の流れには何かしら感じるものがあったことと思います。ビジネスにおいても、リーダーの決断力や実行力は成功のための重要な鍵。この時期に日本とシンガポールとで決断の速さやその結果の違いを対比させて見ることができるのは、我々にとっても貴重な学びの機会と言えそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.190(2011年06月06日発行)」に掲載されたものです。

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