シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP「市場参入の大きな成果」

社説「島伝い」

2016年5月16日

「市場参入の大きな成果」

最近、眼鏡店を展開するオンデーズの名を地元紙の記事で続けて目にする機会がありました。4月下旬には、景気の減速で苦戦が続く小売業界にあって躍進している日系企業の一つとして、さらに今月初めには、同社の3年前のシンガポール市場参入が刺激となって当地の眼鏡業界に変化が起きていることが取り上げられていました。

 

少し前まで眼鏡の価格は数百Sドル以上と高いのが当たり前で、薄型レンズや偏光レンズなどを選択すれば値段はさらに上がり、注文後、何日か経ってから眼鏡を受け取りに店舗へ再び足を運ぶのもごく一般的なことでした。そこに風穴を空けたのがオンデーズだったようです。

 

オンデーズが日本で設立されたのは2002年ですが、その後債務超過で倒産寸前になり、現社長の田中修治氏による経営再建が始まったのが2008年。素材や色、形など様々な種類が豊富に揃ったフレームの中から顧客が好きなものを選べて、薄型レンズ込みでも従来に比べて安くシンプルな価格体系、注文から商品受け渡しまで最短20分、といったサービスが日本でも広く受け入れられてきました。そしてほぼ同様のサービスが、シンガポールでも男女を問わず様々な年代の眼鏡ユーザーの心を捉えたようです。いまや地元の眼鏡チェーン店も価格やサービス内容を見直すまでになったことは、同社だけでなくシンガポール市場にとっても大きな成果の一つでしょう。同業他社が追い上げを図ろうとしている中、眼鏡業界はこれからますます面白くなりそうです。

 

シンガポールは、世界中の商品やサービスが入って来やすい市場であり、眼鏡業界のように新たな参入によって大きな変化が起きる可能性は今後もまだまだあるでしょう。成功事例となったオンデーズが持つ強みは、ユーザーを惹きつける様々な商品を自社ブランドで提案できる企画・開発力、豊富な品数でニーズに応えられる生産力、商品管理力、サービスのスピード感などで、異業種でも参考になる点がいくつもありそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.302(2016年5月16日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP「市場参入の大きな成果」