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社説「島伝い」

2014年7月7日

ギリギリの勝負ができるか

日本でプロ野球のテレビ中継が盛んだった頃、ピッチャーの投球がバッターにぶつかりそうになり、怒りを露わにしたバッターとピッチャーが胸ぐらを掴みあって、いつの間にか周りに集まったナインを巻き込んで大乱闘、ということが珍しくありませんでした。しかし、あるインタビューで元プロ野球選手の川崎憲次郎氏が「今は乱闘もあまりない」とコメントしていました。

 
プロの世界に集まっているのは、いずれも高い目標を持って野球に取り組んできた選手ばかり。逃げずに相手に向かっていき、ギリギリの勝負をしているからこそ、時には乱闘騒ぎにもなっていたのでしょう。しかし、最近の若手選手は強い闘争心を出さず、失敗を恐れて思い切ったプレーを怖がる選手もいる、それが乱闘がなくなったことにも表れているのではないか、と氏は見ているようです。

 
真剣勝負に勝つためには、いちかばちかギリギリのプレーが必要な場面もあります。そんなきわどいプレーを可能にするのは、勝負の場面から逃げずに何度も挑み、相手とぶつかったり、失敗して痛い目にも遭いながら積み重ねてきた経験。試合の中では、監督やコーチに指導されたことがない状況も起きます。教えられていないからわからない、と逃げていては試合には勝てず、経験値も上がりません。しかし身になる取り組みをしてきた選手やチームは、初めて経験する場面でもとっさに自分達の判断でプレーし、その結果「あんなことは教えてもいない、本当によくやった」と監督やコーチが舌を巻くような好プレーで切り抜けて、試合さえものにします。

 
ビジネスにおいても想定外の場面に遭遇することがあります。海外でのビジネスならなおさらで、上司や本社から指示があった範囲以外のことに対応しなければならない状況は多々あります。そんな中でも前進し、ビジネスを発展させて生き残り続けるには、社内外でさまざまな場面を経験しながら切磋琢磨し、より良い方法を求めて人と違うことを試したり、時には思い切った行動でギリギリの勝負ができるビジネスパーソンがやはり必要なのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.260(2014年07月07日発行)」に掲載されたものです。

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