2人目を出産後、新聞記者の夫の赴任に連れ添い、2017年4月に来星。来星前は留学時に経験したマイノリティ感のトラウマや、当地の歴史的な背景を想い警戒したが、実際は「つたない英語でも一生懸命聞いて、わかろうとしてくれる」人ばかり。公共の乗り物では、おじいちゃんが子供に席を譲ろうとする場面に何度も遭遇し、東京と比べた。「子供に優しい国。皆急いでてイライラしているせわしない東京よりもゆったりしている」と海の向こうを憂う。自身は雇ったヘルパーが新たな悩みの種になったり、新しい土地での生活に慣れるまで苦労したが、来星は子供たちにベストな選択だったと言い切る。
家事や育児の合間を縫って論文を執筆する毎日。「思考が分断されない時間が欲しい」という思いが募る。「出張したい。2~3日没頭できる時間が欲しい」。そんな中、家の近くのHDB内の公園で仲良くなった地元ママたちとの会合が唯一ほっとする時間。先日、いつも温かく迎えてくれる彼女たちに「ホーム」を感じ、胸が熱くなった。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」に自らの帯同生活を重ねる。後悔しないように心の欲するままに学び続けたい。そして、ジャーナリスティックに書かれた社会学の分析書であり読み物としても優れた『The Time Bind(A.R.ホックシールド著)』みたいな本を書きたい、という。凛とした眼差しの奥に、確かな自信を感じた。