高校生の時の夢は、パイロットだった。しかしパイロットは身体上の理由で難しそうだと判断し、飛行機やロケットを造る仕事に就くべく、大学でコンピュータサイエンスを専攻する。大学で学ぶうちに、Googleやmixiなど日常的に使うウェブサービスが、自分でも作ることができるものだと知る。また2000年代半ばに持ち上がったWeb 2.0(誰もが情報発信できるように変化したウェブ)のムードを好ましく感じたこともあり、IT業界に身を置き、自分で作る立場になりたいと、夢は変化していった。グローバルに働きたいという思いを持っていたことから、文化的価値観が近く、北米などの英語圏に比べると言葉のハンデが少ないアジアでの起業に至ったのだそう。「夢は常にアップデートすることが大事。20年後の姿を考えて、そこから逆算して生活すると良いとおっしゃる方もいるのですが、それだと「今年は〜すべき」という「べき論」になってしまって、目の前にある人生が楽しめません。去年の自分ができることと、今の自分ができることは違い、夢は徐々に大きなものが描けるようになっていく。短いスパンの夢を設定してどんどん実現させていくと、いいサイクルに入ると思います」と平野さんは話す。
今年初めに出産を経験。が、彼女は立ち止まらない。「10年前にAIビジネスを起ちあげましたが、当時は全然売れなかった。でも今やAIの文字を見ない日はありません。未来予測よりも、タイミングを図ることのほうが難しい。周囲の情報をインプットし、時期を見ながら進んでいきたいです」と話す彼女の今の夢。それは「シナモンを、世界を代表する会社にする」ことだ。
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