シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第6回:水処理の未来に向けて

Dr.河野の寝耳に水の話

2014年9月1日

第6回:水処理の未来に向けて

「水処理の未来って?」
最終回ではこれから導入の加速が期待されている産業排水処理と、新たな水処理方法である「機能粉」技術、更に水処理技術の未来への期待について触れたいと思います。

 

産業排水処理

この連載を通じて、上水(第2回)下水(第5回)に関してお話してきました。更にもう1つ、潜在的に大きな問題を抱えていて、将来もマーケットが拡大していくであろう水処理の分野に「産業排水」があります。第3回でも触れましたが、産業の発展が急激に進んでいる国々では河川の水質低下が深刻な問題となっています。また新たな製品開発によって、排出される水質も日々刻々と変化していることが、これらの水処理を難しくしている原因の1つにもなっています。つまり、次世代においてグローバルで大きく位置づけられ、ニーズも高い水処理の一つが、これらの産業排水に対応できる高効率の新たな処理技術となります。

 

機能粉とは?

そこで東芝では産業排水処理に向けて膜でもなく、薬品でもない「機能粉」による新たな水処理を開発しました。この技術により、環境負荷の低減、汚泥処理費用の削減、有価値物質の回収などが実現可能です。従来の凝集剤を用いる水処理法では、薬品由来の汚泥などにより環境影響負荷が発生していました。また、産業排水処理分野においては、廃棄物発生量の低減は重要な課題であり、排水に含まれている金属などの成分を高純度で回収することも切望されていました。
「機能粉」は薬品の代替となる上に、再生利用が可能なため、薬品費や汚泥処理費といった水処理に関するコストを大幅に削減できることが特長です。また更に有価物を回収できるという点でも、環境調和型の新たな水処理システムを構築することが可能です。現在、この機能粉を用いた「無薬注ろ過システム」を納入しており、例えばプリント基板の製造工程より発生する銅含有排水から、薬品由来の汚泥を削減し、銅を高純度な有価物として回収できる排水処理システムとして運用されています。本システムでは分離・回収した機能粉を循環・再利用できるため、システムの運用コストを約40%削減できています。

 

次世代に向けた次の一手とは 〜リバース・イノベーション〜

「リバース・イノベーション」とは、新興国向けに開発した製品を先進国へ展開することにより、グローバルでのシェアを拡大しようとする戦略です。これまでは先進国で製品開発を行い、その製品をマイナーチェンジした言わば廉価版を新興国へ投入してきました。一方、リバース・イノベーションでは、新興国で「イノベーション」を起こすことにより、国の状況に合った製品を生み出し、その製品を先進国へ「リバース」するわけです。いまや多くのグローバル企業で取り組まれているイノベーションです。特に水処理分野においては、新興国におけるマーケットのポテンシャルが非常に高いため、先進国からの単なる輸出対応だけでは今後ビジネスが難しくなる日が来るのではないか?と予測されます。
この新興国から出てくるかもしれない“巨人”が先進国に進出してくる前に、日本の技術を用いて新興国でイノベーションを起こすことができれば、次世代では新興国市場だけでなく、ウオーターバロンに対抗してグローバル市場へも大きく進出していけるのではないでしょうか。私も、「グローバルでの水環境改善のために、次世代へ向けてこれから何ができるか?」をもう一度深く考え直したいと思っています。

 

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機能粉(右上)とそれを用いた無薬注ろ過システム

 

最後に

実は各回冒頭の「」の最初の1文字を繋げると、6文字のある単語になります。「○○○○○○」の恵みに感謝をこめて、この連載を終えたいと思います。半年間お付き合いいただきまして、ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。

 

文=河野 龍興(こうの・たつおき)

東芝アジア・パシフィック社 水研究センター センター長
東北大学 大学院 環境科学研究科 非常勤講師

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.264(2014年09月01日発行)」に掲載されたものです。
博士(工学)

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