目次
- Q. シンガポールにおける永続的代理権制度について教えてください。
- Q. すでに委任状(Power of Attorney; POA)があります。その場合でもLPAが必要ですか。
- Q. すでに遺言書を作成しています。その場合でもLPAが必要ですか。
- Q. もしシンガポールでLPAを作成せずに意思能力を喪失した場合、どうなりますか。
- Q. 私を含め、家族もシンガポール人ではありませんが、シンガポールでLPAを作成することは可能でしょうか。
- Q. 代理人にはどのような人を選んだらいいでしょうか。
- Q. LPA Form 1、LPA Form 2はどのような違いがありますか。
- Q. LPAの作成方法について教えてください。
Q. シンガポールにおける永続的代理権制度について教えてください。
A. 2008年制定の精神能力法(Mental Capacity Act 2008、以下「精神能力法」)に規定の永続的委任状(Lasting Power of Attorney; 以下、「LPA」)があります。日本の任意後見制度に相当するもので、LPAは、本人(委任者)が作成し、シンガポールの後見人登録事務所(Office of the Public Guardian)が管轄します。LPAは、将来的に自己の意思能力を喪失した際、以下の事項について代わりに決定、行動する権限を有する1名または複数名を代理人として指定します。
(1)健康、福祉に関する事項:日常の衣食住に関すること、誰と連絡をとるか、及び/又は
(2)不動産、金融等の資産に関する事項:銀行口座、不動産、投資、支出について。
精神能力法第4条1項によれば、「意思能力を欠く者とは、特定の事項について意思決定を行う時点において、心身の機能に障害や異常が起きているため、自己の当該意思決定を行うことができない者である。」と規定しています。
また、同法第5条1項では、次の各号のいずれかに該当する場合、意思能力を欠く者は、自己の意思決定を行うことができないものとします。(a) 当該意思決定に関連する情報を理解することができない。(b) 前記情報を保持することができない。(c) 本意思決定を行う過程で、前記情報を使用又は評価することができない。(d) (口頭、手話又はその他手段を問わず)自己の意思決定を伝達することができない。
Q. すでに委任状(Power of Attorney; POA)があります。その場合でもLPAが必要ですか。
A. 委任状を有する場合でも、LPAの作成が推奨されます。いずれも本人に代わって代理人が行動できるように指定するためのものですが、以下のように目的、効力が生じる時期が異なります。
Q. すでに遺言書を作成しています。その場合でもLPAが必要ですか。
A. 遺言書を有する場合でも、LPAの作成が推奨されます。遺言書とLPAは、資産管理や能力喪失への備えにおいて不可欠であるものの(特に自国とシンガポールの両国に資産を保有する海外在住者)、以下のように目的、効力が生じる時期が異なります。
Q. もしシンガポールでLPAを作成せずに意思能力を喪失した場合、どうなりますか。
A. LPAがない場合、後見人を決定するために、まずシンガポールの裁判所に対して申立てを行います。本手続きには時間、費用がかかる場合があり、直ちに後見人を指名することができません。一方、LPAを有する場合、医師が意思能力の喪失を証明すれば、指定した代理人が直ちに行動を開始することができます。
Q. 私を含め、家族もシンガポール人ではありませんが、シンガポールでLPAを作成することは可能でしょうか。
A. 精神能力法に基づき、シンガポール人だけではなく外国人も、21歳以上で意思能力を有している場合は、LPAを作成することができます。ただし、LPAが財産、資産管理に関する権限を付与する場合、委任者はLPA作成時点で破産宣告の免責者ではないことが必要です。精神能力法では、外国人に対してシンガポール国内で有効なLPAを作成することを除外していません。LPA作成時に本国の制度に詳しい専門家にも相談することが推奨されます。本国の法律では、シンガポールにおけるLPAの有効性や執行可能性、リスク等をどのように規定しているか確認するといいでしょう。
Q. 代理人にはどのような人を選んだらいいでしょうか。
A. 個人的な健康、福祉に関する事項については、21歳以上で意思能力を有し、信頼できる個人であれば、誰でも委任することができます。資産に関する事項については、認可信託会社(2005年制定の信託会社法で規定)または21歳以上で意思能力を有しかつ破産宣告の免責者ではない信頼できる個人に委任するといいでしょう。
Q. LPA Form 1、LPA Form 2はどのような違いがありますか。
A. LPA Form 1は、標準的な権限および制限事項に関してはチェックボックスが設けられた書式になっており、個人で作成することができます。本フォームで最大2名の代理人および1名の代替代理人を指定することができます。
LPA Form 2は、弁護士が作成するカスタマイズ形式の書式です。3名以上の代理人や複数の代替代理人を指定でき、権限や制限事項を個々に指定することができます。
同一事項について複数の代理人を指定する場合、以下のいずれかを選択します。
(1)共同:全ての決定を代理人全員で行わなければなりません。代理人のうちの1名でも実行する意思がない、又は実行できない場合は、代理権は消滅します。
(2)共同および単独:全代理人が共同でまたは単独で実行することができます。
Q. LPAの作成方法について教えてください。
A. 委任者、代理人、代替代理人等の全員がSingPassを利用できる場合、後見人登録事務所のウェブサイトで(https://opg-eservice.msf.gov.sg/)、LPA Form 1を作成しオンラインで申請することができます。SingPassを利用できない場合、事情説明書を添えて、LPA Form 1を書面にて提出します。LPA Form 2は、弁護士が作成、申請をします。
LPA Form 1、LPA Form 2ともにオンラインによる申請か書面による申請かに関わらず、全てのLPA申請書は認証が必要です。シンガポールの事務弁護士、精神科医、公認医師が認証を行うことができ、委任者がLPAの目的および法的な効力を理解し、自らの意思でLPAを作成していることを証明します。
オンライン申請は約8営業日、書面による申請は約3週間で受理されます。申請が受理された後、法定期間(3週間)が設定され、当該期間内に異議申し立てがなければ、LPAは登録となります。
