Q. シンガポールで外国仲裁判断の承認や執行はできますか。
A. シンガポールは、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約に加盟しているため、日本を含む他の加盟国においてされた仲裁判断に基づいて(以下、外国仲裁判断)、シンガポール国内において執行が認められると考えられます。
シンガポールにおける外国仲裁判断に関しては、国際仲裁法(International Arbitration Act 1994)および裁判所規則2021(Rules of Court 2021)に定められています。
外国仲裁判断の執行を申し立てる当事者は、国際仲裁法に基づき、以下のものを裁判所へ提出する必要があります。
(1)正当に認証された仲裁判断の原本又は正当に証明されたその謄本
(2)仲裁合意の原本又は正当に証明されたその謄本
(3)仲裁判断又は合意が外国語で作成されている場合、英語による翻訳文
シンガポールの裁判所手続きは、英語で進められます。英語以外で記載された書面は、裁判所に提出する際に、資格のある翻訳者(仲裁判断がされた国における公的機関、外交官又は領事職員等)による認証済みの公証翻訳文を準備する必要があります。
国際仲裁法は、シンガポールにおける外国仲裁判断の承認や執行の法的根拠を示すものであり、当事者が裁判所へ申請する手続きについては、裁判所規則2021に従います。
Q. シンガポールにおいて外国仲裁判断の執行を得るための手続きについて教えてください。
A. シンガポールにおける外国仲裁判断の承認・執行は、以下の二段階の手続きとなります。
1.裁判所規則2021によると、外国仲裁判断の執行を求める当事者は(当事者A)、宣誓供述書の内容に基づいた申請書を裁判所に提出し、外国仲裁判断の執行許可命令を求めることができます。当該宣誓供述書には、以下の事項が必要となります。
(1)仲裁判断の合意及び執行
(2)当事者A及び相手方当事者(当事者B)の氏名、名称、住所、その他連絡先
(3)執行がされていない旨又は執行されていない範囲
上述の第一段階は、形式的な審査であり、通常、裁判所は許可します。裁判所の執行許可命令を取得後、当事者Aは、当事者Bへその写しを送達しなければなりません。
2.裁判所規則2021の規定に従い、裁判所の執行許可命令の送達日から14日以内に、当事者Bは、裁判所に対し、当該命令の取り消しを求める申し立てを行うことが認められています。その際に、当事者Bは、国際仲裁法で定める執行拒否事由に該当することを示す必要があります。本第二段階では、第一段階とは異なり、当事者間の主張や証拠を検討し、審理が行われます。
