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2022年1月6日

22年のアセアン経済は総じて好調か ~活動制限の緩和で回復に向かう流れ

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 新型コロナの蔓延から2年目になる2021年のアセアン経済は、前年の落ち込みから急回復すると思いきや、全体として期待通りの成長を達成できていない。デルタ株やオミクロン株の出現によって、経済活動の停滞を余儀なくされたことが要因だ。ただ、22年はアセアン各地で経済成長のペースが加速する可能性が高い。新たな脅威となったオミクロン株の影響が依然として不透明ながら、ワクチンや治療薬の普及によって年後半あたりから活動制限が徐々に緩和されていくと見られるためだ。以下、アジア開発銀行(ADB)の最新リポート*を基に、域内経済の成長動向を展望してみる。 

※「アジア経済見通し2021年版」補足版(21年12月14日リリース)

 

タイやベトナムが苦戦した21年、シンガポールは大健闘

 まず、21年のアセアン経済動向を確認しておこう。ADBリポートによると、同年は東南アジア全体のGDPが3.0%成長する見通し。国別の成長率は、タイが1.0%、ベトナムが2.0%、インドネシアが3.5%、マレーシアが3.8%、フィリピンが5.1%、シンガポールが6.9%と予想されている。
 
 同年はやはり、コロナ対策で明暗が分かれたと見てよい。夏場にかけて感染者数が急増したタイは、観光業のウェートが大きいこともあって経済全体が大きく停滞した格好だ。また、年前半まで感染抑制に成功していたベトナムも、後半からの感染再拡大によって活動制限が強化された結果、その後の景気が大きく冷え込むこととなった。
 
 一方、感染対策が奏功したシンガポールの景気は急回復。「ウィズコロナ」にシフトするなか、7%近い成長を達成する見通しだ。
 

 

22年に軒並み急回復へ、シンガポールは反動減の可能性

 次に、22年の経済動向を概観してみる。ADBリポートによると、同年は東南アジア全体のGDP成長率が5.1%(前年比↑1.9ポイント)に加速する見通し。前述したように、オミクロンなどコロナ変異株の影響が懸念されるものの、活動制限の緩和などで全体として経済が回復に向かうという。国別では、タイが4.0%(↑3.0ポイント)、ベトナムが6.5%(↑4.5ポイント)、インドネシアが5.5%(↑2.0ポイント)、マレーシアが5.9%(↑2.1ポイント)、フィリピンが6.0%(↑0.9ポイント)と予想されている。
 
 ただ、シンガポールは4.1%(↓1.1ポイント)に減速する見通し。比較対象となる前年の伸びが高すぎたことも大きな要因だが、コロナによる出入国規制の強化で外国人労働者の不足が深刻化していることも痛手となる。こうした状態が続くことで、特に建設業界などの停滞が長引きそうだ。
 

 

製造業が経済けん引か

 22年のアセアン経済が全体として高い成長を達成しそうなことは前述した通りたが、その中でもフィリピン(6.0%)とベトナム(6.5%)、マレーシア(5.9%)、インドネシア(5.0%)の予想値が高い点には注目だ。いずれも、製造業をメインとしていることがカギ。コロナによるに活動制限下にあっても、各国の製造業者が生産ラインを稼働させるノウハウをほぼ習得したため、小売り・観光業などと異なり、業務上のマイナス影響を受けにくい耐性を備えたといえる(自動車産業で有名なタイもこのグループに入ってよさそうなのだが、観光業のウェートが高いために全体の伸び率で見劣り)。
 
 逆に言えば、コロナが収束に向かい各種の活動制限が前倒しで緩和されていた場合、22年のGDP成長率は各地で予想をさらに上回る可能性もある。そのシナリオを実現させるためには、差し当たり、オミクロン株がそれほど危険視されなくなる状況になることが必要となろう。
 

 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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