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シンガポールで会社の名前を決める際の注意点

Q. シンガポールで新しく会社を設立しようと考えています。会社名を決める際に何か気をつけることはありますか。

 会社に限らず、会計法人監督庁(Accounting and Corporate Regulatory Authority:以下、ACRA)の管轄下にある法人や事業を登記するには、それに先立って名称を予約しなければなりません。
 
 名称の予約にかかる費用は15Sドルで、一旦予約されると120日間有効とされ、その間に当該名称を使用して法人や事業を登記できます。既に登記されている法人や事業の名称を変更する場合にも同じ手続きが必要です。名称の予約に際してはACRAの登記官による審査があり、以下のような名称は却下されます。
 
 (a) 公序良俗に反する名称
 (b) 既に登記されている他の法人や事業の名称と同一の名称
 (c) 既に予約されている名称と同一の名称
 (d) 財務大臣の指示により使用が認められていない名称(「Temasek」など)
 

Q. よく会社名の最後についてるPte.とかLtd.は、何ですか。

 シンガポールで設立される株式有限責任会社には私会社と公開会社の2種類があり、私会社であればPrivate Limited、公開会社であればPrivateなしのLimitedで会社名を終わらせなければなりません。省略形や括弧つきで表示することも可能で、私会社の場合は省略形のPte. Ltd.がよく見受けられますが、Private Ltd.や(Pte.) Limitedといった選択も可能です。ちなみに、私会社と公開会社の違いは、定款で株主の数が50名以下に限られ、かつ株主による株式譲渡の権利が制限されている会社は私会社、そうでない会社は公開会社となります。なお、外国会社の支店を登記する場合には、本社と全く同じ名称を登記しなければなりません。
 

Q. 既に登記または予約されている名称と同一と見なされると却下されるそうですが、どのような場合に同一であると考えられるのでしょうか。

 例えば、ABC CompanyとABC Corporationの場合、名称の最後についているCompanyやCorporationなどの語句は、比較の上では除外して検討され、同一の名称となります。また、XYZ Trading、XYZ International、XYZ SingaporeなどにおけるTrading、International、Singaporeなどの語句についても、一般的な意味をもつ語句であり、会社を区別する語句として認められず、同一の名称であると見なされます。一方、ABC Hotel Development Pte. Ltd.とABC Hospitality Pte. Ltd.という名称の例では、”Hotel Development”と“Hospitality”でサービスの内容に差異があると見なされ、異なる名称として認められます。
 

Q. 自分達が知らない間に後からよく似た名称で登記した会社があった場合、使用の差し止めを申し立てることはできますか。

 近似する名称が登記されてから12ヵ月以内であれば、使用の差し止めを申し立てることができます。但し、単に名称が似ているというだけでは、申し立ては認められません。同業他社がよく似た名称を使用して商売することにより、顧客が混同するといった実質的な不利益があると認められれば、申し立ての対象となった相手に対して名称を変更するよう指導がなされます。
 

Q. 他に名称について気をつけることはありますか。

 許認可が必要な特定の業種を想起させるような語句を含む場合、関係省庁の許可が必要になります。例えば、「Military」や「Defence」という語句が含まれていると防衛省、「Law」や「Legal」が含まれていると法務省、「Hospital」や「Surgery」の語句が含まれていると保健省の許可が必要になります。
 
 また、大文字・小文字の組み合わせにこだわりがある場合もあるかと思いますが、登記上は大文字のみで表示され、実際に大文字と小文字をどう組み合わせて表示するかは、会社の自由となります。
 

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著:Tricor Singapore Pte Ltd 斯波澄子