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魅力的な商品をアジア全域に日本企業の海外進出の助けになりたい

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すっかり定着した、インターネット通販が楽しめる日本最大級の総合ショッピングモール「楽天市場」のシンガポール版が今年1月14日、グランドオープンした。近隣諸国の消費者も利用可能で、東南アジアでの販路拡大を目指したい日系企業にとっても力強いパートナーになりそうだ。サイト運営を手掛ける現地法人、楽天アジア シンガポールEコマース部門の森谷知弘氏に、事業戦略について伺った。

 

――シンガポールの「Rakuten」はどのようなサイトですか。
出店している企業の商品をパソコンやスマートフォンなどから買うことができます。宅配はシンガポールポスト、ヤマト運輸と提携しており、店舗さんによっては自社便もあります。商品は日本のものが半数以上です。日本の商品はお客様がご注文後、空輸で運び、最短4日でシンガポールのご自宅に届きます。シンガポールの商品は、早いものは1日で届きます。

 

――どんな商品が、どんな方に人気がありますか。
日本文化に興味がある人にはファッションアイテム、ガンダムのプラモデルやマンガなどの商品が売れています。その人気は予想通りでしたが、予想以上に食品や日用品が売れています。例えば、日本のお米、美容・健康食品、カニ、チョコレート、スナック菓子、おむつ、家電など。購買は半数以上が女性、30代前後の若者が多いです。スマートフォンからのお買い物や、facebook広告からのサイト来訪者が他の国と比べても多いのも特徴的です。

 

――当地で先行する通販サイトとの差別化は。
日本でしか買えないもの、ニッチな商品を早くお手頃に手に入れたいというニーズにお答えできること。そして、日本で培ったノウハウを生かし、「安心」「便利」「楽しい」という基本のコンセプトを徹底し、日々改善しています。「安心」は、お店の詳細な情報や店長さんの人柄を出すことで、どんなお店なのか顔が見える工夫をしたり、返品ポリシーも明確にしたりしました。「便利」は、サイトデザインの改善。クリックしやすいボタンのデザインや位置、言葉の使い方は何か。「ここまで見た後で買うのをやめた」といったような、お客様の購買動向調査をしてきた結果が生かされています。そして「楽しい」は、キャンペーンを目白押しにして、楽しくお買い物できる仕掛けを次々に打ち出しています。黙って商品を並べるだけの「自動販売機」ではネットで物は売れないですから。

 

――反応の良かったキャンペーンは。
旧正月前商戦を狙って、「Rakuten」のグランドオープンの時期を設定しました。
それもあってか、グランドオープン直後に開催した送料無料キャンペーンは、驚くほど反応がよかったです。ご好評につき、現在でも延長しているくらいです。
しかし、休暇中には出かけてしまう人が多いのか、思ったほど買い物をする人の数は増えなかった。そこで、後日使える10Sドルのクーポン券発行にキャンペーンを切り替え、会員数を増やすことに注力しました。実際、休暇後にはさらに売り上げが急増したので臨機応変に対応してよかったと考えています。また、外出する人が多くて売り上げが落ち込む金曜日の夜にも、お得な「ワンナイトクーポン」などを発行しているのも好評です。

 

――当地のネット通販市場は日本と違いますか。
私の感覚では、2003年〜2004年ごろの日本の雰囲気とよく似ていると感じました。インターネットは普及したけれど、ネット通販はまだ特別なものというイメージ。ただ、スマートフォンやタブレット普及率がすでに日本以上なので、急速な勢いで広がっています。
魅力的な商品をそろえて、サイトを作りこみ、キャンペーンを開催するときちんと反応がある。日本で培ったノウハウをきちんと仕掛けていけば、手ごたえが非常に大きいです。後発ではありますが、ネット通販市場が定着していく時期の中では、「Rakuten」は中核になれると思っています。

 

――日本の企業の出店にどんな困難がありましたか。
質が高い、面白い、美味しい、日本の商品は当地でも人気です。ただ、多くの日本企業は、英語が苦手。「Rakuten」に出店して現地の人々に販売しようとした時に、商品紹介が困難という壁がありました。そこで、これまでの出店企業の販売サポートをさらに強化して、翻訳まで請け負いました。また、日本から空輸する商品も送料をすべて一律にし、お客様にわかりやすくしました。これは、各国での展開の中でも全く新しい取り組みでした。海外進出を目指す日本の企業の方々は多いですが、シンガポールにオフィスを構え、リサーチして営業をして、というのは手間も費用もかかって難しい。「Rakuten」への出店は、日本の企業の方にとっても海外進出しやすい仕組みになっています。

 

――楽天市場のアジア展開にとってシンガポールの位置づけは。
アジアでは現在、台湾、インドネシア、マレーシア、タイでサイトを運営しています。2012年にシンガポールにできたこのオフィスも、アジアのヘッドクォーターとして全域の管理を支援する役割です。ですが、日本の商品をこれほどまで多数取り揃えているのはシンガポールが初めて。2月にシンガポール国外からの注文も受けることができるようになり、実際にマレーシアなどから利用があります。シンガポールには、周辺諸国から買い物に来る人々もいる。こうしたニーズを取り込み、今後は、東南アジア全域からの注文を受けられるように範囲を拡大していきたいと計画しています。シンガポールをハブとしてアジア各国のお客様を取り込み、ブランド認知を高めていきたいですね。そのために足元で改善すべき点は物流の問題。仕組みを変えて、もっと届けるスピードと質をアップさせます。

 

――今後の展望・目標を教えてください。
ある日本の出店企業が商品と一緒に「Thank you」と手書きした付箋を入れたら、ローカルのお客様が大変に喜ばれ「感激した」と言われた、という出来事がありました。また、商品が届かないという苦情があり、私たちが直接商品をお届けした時も大変驚かれました。高品質、接客レベルが高い、時間通りに届ける、というのは「おもてなし」という日本文化の一つ。小さいことかもしれませんが、競争力になると思います。シンガポールでも水・電気・ガス・Rakutenと言われるほど、生活に欠かせない存在になりたい。アジアのお客様の生活を豊かに、そして日本の企業の海外進出のお手伝いをして、日本を活気づける力になりたいと思っています。

 

 

「楽天市場」シンガポール版のサイト