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MBAは共通言語!グロービス経営大学院修了生によるMBA四方山話

 MBAを取得するためには、どのような努力とどれくらいの費用が必要なのかをグロービス経営大学院を修了した4名のMBA取得者にお伺いしました。みなさんが「経済的に許されるのであれば絶対にお勧めしたい」と声を揃えるその理由とは?仕事の時間管理法・ファミリーマネジメント・MBAあるあるなどMBA取得者の言葉がキャリア構築のヒントになるかもしれません。

 

 

スピーカー紹介


金子 可林(かねこ かりん)
Credit Saison Asia Pacifc Pte. Ltd.
株式会社クレディセゾンにて、クレジットカードの営業や商品企画に約9年間従事。その後、海外事業部へ異動し2015年よりシンガポール子会社へ赴任。シンガポールの出資先スタートアップ企業との連携、及びインド子会社の設立等、海外事業開発・統括を担当。
 


畠山 洋輔(はたけやま ようすけ)
SAP Asia Pte Ltd
2002年新卒でSAPジャパン株式会社に入社。人事ソリューションのシステム導入コンサルタント、プロフェッショナルサービス部門のビジネスオペレーションを経て、2018年の春にシンガポールのSAP Asia Pte Ltdに転籍。現在は社内のプロセスやツールなどの標準化と最適化に取り組み中。
 


佐々木 秀洋(ささき ひでひろ)
Nomura Real Estate Asia Pte LTD
Managing Director
野村不動産株式会社にて分譲住宅事業、商業施設の開発運営事業に携わった後、2018年にシンガポール現地法人へ、現職。グロービスは2014年に門を叩き、2年間で修了。現在はシンガポールを拠点に、アジア・オセアニア地域における不動産開発事業の組成を担う。
 


澁谷 裕子(しぶや ゆうこ)
Takashimaya Singapore Ltd. General
Manager, Sales Operation & Merchandising
1992年、株式会社高島屋入社。婦人服の販売、セールスマネージャーを経てバイヤー職に。2009年にグロービスに入学を決意。同年入学し、度重なる海外出張をこなしながら何とか2年間で卒業する。その後、MD本部Div長や、営業開発グループ長を経て2018年3月末から現職。

 

MBAを目指すきっかけとグロービスが重視する”志”

MBAを取得しようと考えたきっかけはなんですか。

佐々木さん:同じ部署から中々異動できずに悶々としていたところに、たまたま会社負担でMBAを取得できる制度を見つけて…ちょっと外の空気を吸ってみようかなと思ったのがきっかけです。

 

澁谷さん:私はほぼ思いつきです。受講後に仲良くなった仲間からは「お前はエステ感覚でグロービスに来たんだろう」と冗談を言われました(笑)。

 

金子さん:営業から営業企画への異動がきっかけでした。仕事の内容が大きく変わったことでそれまでとは違う知識が求められるようになりましたが、OJTだけだと不十分だと感じグロービスの単科生制度(本科入学前に1科目・3ヵ月から先行して受講できる制度)を利用し受講を始めました。単科生としてさまざまな科目を受講するうちに、例えば会計やマーケティングなどまったく違う領域だと思っていたもののつながりが徐々に見えるようになってきて、全体像を学べるMBAの必要性を感じるようになりました。

 

畠山さん:僕は学生のころからMBAに興味があって、20代後半あたりから海外に留学したいと調べていました。でも、費用が高かったり、会社を辞めないといけなかったり…。なかなか踏ん切りがつかなかったんですが、金子さんと同じで部署の異動がきっかけになりました。もとはお客様の会社にシステムの構築担当、いわゆる”IT屋さん”として常駐していました。でも、異動で社内の調整作業やマネジメントに関わることが増えてくると、今までの”IT屋さん”の知識だけでは足りなくなってきました。会社のそれぞれの部署でどうやって意思決定しているのかを知りたいと強く思ったので、グロービスの門を叩きました。
 

学費の負担はどうでしたか。

畠山さん:それほど負担とは思わなかったですね。通い始めたころは30代半ばで独身で、お金も時間のやりくりもゆとりがありましたので。アメリカへの留学費用と比べて「安いじゃん」って(笑)。

 

金子さん:負担は結構ありましたね。在学中に実家に帰って節約するくらいでしたから。ですが、その負担よりも好奇心のほうが大きかったです。

 

澁谷さん:学費は2年間で300万円弱くらい。大金ですが、私の場合はお金というよりも時間の方が大丈夫かなと心配していました。

 

入学してからグロービスへの印象は変わりましたか?

佐々木さん:私は会社からの派遣だったので、2年で単位を取る必要がありました。本科入学前に単位を取得できる単科生制度を利用しなかったので、入学後は最初から最後まで走りっぱなし。今では楽しい思い出ですが、当時は大変でしたね。

 

金子さん:私は単科生から始めていたので、入学前後で大きなギャップはなかったですね。

 

畠山さん:私も同じです。単科生制度を利用していたので、ギャップはなかったです。それよりも、本科に入学すると「あすか会議(全国のキャンパスの在校生・卒業生・教員、各界のリーダーなどが集まるカンファレンス)」とか「クラス活動」があり、本科生の生活は密度が濃いことが分かりました。

 

印象的な仲間が多かったのですか。

澁谷さん:授業は1科目あたり2週間に一度、1回3時間。これだけ聞くと「たいしたことがない」ように思えるんですが、実は予習・復習が大変なんです。グロービスの授業はディスカッション中心。議論についていけないので、予習をしないということは絶対にありえないです。共に学ぶ仲間が許してくれません(笑)。

 

一同:たしかに許されないですね(笑)。

 

佐々木さん:多彩な仲間がいました。自分と同じような会社員だけでなく自営業、上場企業の役員、ベンチャー創業者、有名企業の御曹司などなど。みんな濃かった(笑)。いい意味で自分の価値観を否定してくれる人がたくさんいたのが刺激的でした。

 

畠山さん:MBAって聞くと大企業のエリートばかり、というイメージがありますが、グロービスに入ってそのイメージが覆って…。

 

一同:本当にいろんな人がいますよね。

 

畠山さん:私は中小企業の2代目社長を務める方々の姿がとくに印象に残っています。そういう人たちの背負っているものや責任感、使命感にとても刺激を受けましたね。

 

澁谷さん:歴史のある古い会社にいたので、働く環境が全然違う人と知り合いになれたのは面白かったです。そして、グロービスに集まる人たちはみんな、学ぶ熱量がすごい。最初は「なんなんだ、この人たちは」って(笑)。仲間で触発し合うその熱量とか空気感がすごいんです。

 

グロービスには「何のために生きるのか。あなたの志は?」といったことを考える科目もあるそうですね。

澁谷さん:はい。陽明学を学んだり、中江藤樹や二宮尊徳といった偉人たちの生き方を学んだり。そうした普通のビジネススクールではやらないような科目もありましたよね。

 

一同:ありましたね。

 

金子さん:「志はなんですか?」と問われると、「えっ」ってなってしまいますよね。でも何度も問われて考え続けていると、自分のこの先のキャリアが明確になっていくんですよね。

 

畠山さん:「志とは何か?」を2年間、問われ続けました。どの授業でもはいってきますよね(笑)。だから、嫌でも考え続けちゃいます。

 

佐々木さん:自分のブレない部分が発見できたのは、しつこいほど「志」を問われ続けた最大の成果。ただの理想ではなく自分のありたい姿を、そして机上の空論ではなく目指すべきものを具体的に語れるようになった。鍛えられたなあ(笑)。

人生最大の勉強量と適度な息抜き

勉強時間の確保などに工夫をしましたか。また、ご家族にはどのように接していたのでしょうか。

澁谷さん:授業はケース(企業事例)に沿って議論する形式だったので、ケースを読むだけで1時間。それも一度読んだだけでは理解できないので、何度か読まないといけません。自分がやったものをみんなで持ち寄って「勉強会」も開いていましたね。授業以外でも学ぶ機会が多いのが、グロービスの魅力のひとつです。

 

畠山さん:予習は、だいたい6~10時間ぐらい。働きながらなので、なかなかまとまった時間とれない。だから30分の細切れの時間を使って勉強していましたね。

 

佐々木さん:自分は子供が小さかったので、土日に子供が寝てから勉強していました。家族の協力あっての通学でしたので、妻には本当に感謝です。タイムマネジメントは非常に大変でしたが。

 

金子さん:私は実家に帰ったので、家事は親にやってもらいました(笑)。勉強にかける時間は、グループワークがある科目を受講するかどうかで大きく変わってきます。私はベンチャー企業経営者になりきってグループで事業計画書を作成しプレゼンテーションする科目を受講したのですが、グループメンバーでほぼ毎日ディスカッションしていました。毎日のように集まっていると、勉強時間に余裕がなくなってしまいますよね。

 

澁谷さん:最後にやった「研究プロジェクト(大学院での学びの総まとめとして、グループで成果物を提出する科目)」を受講していたときは、仕事してるか勉強してるか寝てるかというくらいに追い詰められましたね。みんなで徹夜したりとか…。人生でこんなに勉強したことがないくらい、最後の数ヵ月はがんばりました。

 

畠山さん:僕は在学中に結婚したんですが、通いながら結婚式の準備をしていたので、奥さんに「なんでそんなに勉強するの。どうして勉強しているのに、懇親会で遅くなるの」と突っ込まれて、なかなか理解してもらえませんでした(笑)。ちなみに、僕が卒業した翌年に奥さんが入学して、今度は逆に僕が我慢することになるんですが(笑)。

 

佐々木さん:懇親会といっても、授業のテンションのまま飲みに行きますからね。授業で足りなかった議論をお酒飲みながらまた始める。くだらない話半分・熱い議論半分でした。側から見ているとただの飲み会ですが(笑)、僕らにとってはときに先生をまじえての授業の延長戦でした。

 

学業の息抜きはありましたか。

金子さん:修士課程は普通は2年間ですが、私は単科も入れて4年間通っていました。時間も学費も追加でかかっても、自分のペースでじっくり勉強できたほうがいいと思ったので。その分、年末年始やGWは、気分転換に旅行に行ったりしていました。

 

畠山さん:海外ドラマを見るのがすごく好きだったんですけど、入学してからはまったく見られなくなって…。ただテニススクールに週一で通うことは続けていて、体を動かすことは気分転換になったかなと思います。

 

金子さん:私も皇居ランやっていました!グロービスの友達同士で、月一回朝走ってました(笑)

 

佐々木さん:私はクラシック音楽が大好きなので、気分転換は大音量で音楽を聴くことでした。ドカンと。No Music, No Lifeです。

 

澁谷さん:私はグロービスの仲間とみんなで温泉に行ったりしていたかな。
 

 

夢を後押ししてくれる武器がMBA

MBAを取得してよかったと思うことはありますか。

佐々木さん:海外では自分たち(日本)の常識が通用しません。相手の文化習慣や価値観を認めて、ズレを確認するところからスタートしないと会話にもならないです。MBAを学んでいなかったら、自分の価値観をただ相手に押し付けていたと思います。言葉が違っても学んだことはビジネスの共通言語になります。特にグロービスでは現場で本当に活きる力が重視されるので、「理屈だけじゃだめなんだよ!」ととことん学校で鍛えられました(笑)。実務の世界は教科書通りに行きませんので、この経験が本当に役立っています。

 

澁谷さん:私は卒業してすぐに、大抜擢されましたが、その時にMBAという武器があったことが支えでしたね。その後も海外を含めた3社でジョイントベンチャーを作るみたいな話があって、その時に株式の持ち合いをどうするのかとか、負債と資本をどうするとか。MBAを学んでいなかったら絶対にわからなかった(笑)。誰しもいつか、これまでの経験では勝負できない場面に遭遇するから、その時に武器を持っているとチャレンジする勇気が出てきますよ。

 

金子さん:同感ですね。

 

畠山さん:私も満足しています。まだ管理職ではないので実際にMBAのスキルを駆使する機会はあまりないんですが、いろんな部門の言葉を理解できるので、より効果的に動けるようになったという実感があります。

 

シンガポールならではの難しさはありますか?

佐々木さん:この国は、とにかくマルチカルチャーだし多様性に富んでいるし、そこは圧倒的に日本とは違うので…自分の価値観だけでは生きていけないです。

 

一同:そうですね。

 

澁谷さん:日本人みたいに「このミッションをやるんだ!」という気合と根性で人が動かないんですよ。だからロジカルに説明するとか、やりやすいように仕組みをつくらないといけない。そういう違いはすごく感じています。「こんなことがなんで起こるの!」ということが毎日起こります。こちらにきて毎日のように怒っていたら多少のことでは動じなくなりましたが。

 

畠山さん:違いを楽しむくらいがいいですよね。ピリピリ、カリカリしないで。

 

佐々木さん:はい、そしてその感覚を本社との会話にも持ち込んで、地雷を踏む(笑)。

 

MBAを取得したいと考えている人にアドバイスはありますか。

澁谷さん:お金や時間はかかりますが、得るものの方がはるかに大きいです。人によってはご家族がいたり、犠牲にすることもあるとは思うんですが、もし時間や経済的に許されるのであれば、私は絶対にお勧めします。大変だと思うこともあるんですけど、楽しいことやいいことの方が何十倍もあると思います。

 

佐々木さん:まったく同感です。MBAというタイトルが重要なのではなく、そこで学ぶ内容や出会う仲間、悩み考える時間が何よりも大事だと気づきます。迷っている方がいれば、是非背中を押してあげたいです。

 

みなさんの今挑戦してみたいことや夢を教えてください。

金子さん:今はシンガポールやインドの子会社の設立から財務経理、人の採用、商品設計など、一通り経験できています。マネージャーでもなんでもないのに会社の全部を見ることができるのは、幅広い仕事を任せられる海外だからこそですね。将来的にはこの経験を、日本の将来のために海外とつながる仕事で活かせたらなと思っています。

 

澁谷さん:抽象的になってしまうのですが、従業員が幸せで、ここで働いていてよかったなと思えるような会社にしたいなと綺麗事じゃなくて本気で強く思っています。そのためには会社の利益を出し続けないといけないし、対価を支払わないといけない。以前は感じていなかった責任感みたいなものが芽生えています。これから日本のダイバーシティも変わっていくと思うので、多様な文化で働くということがどういうことなのか、会社のなかで今後体現していければと思っています。

 

畠山さん:社内の仕組みを効率化して、社内で働く人たちが自分らしい力を発揮することで、会社全体のパフォーマンスもあげたい、と日本にいるころから思っていました。今はもうちょっとインパクトの幅を広げたいと考えていて、グローバルでの効率化とか仕組みづくりをやっていきたいなと。もう一つ、海外にいる日本人のプレゼンスを上げたいとも思っています。

 

佐々木さん:『天空の城ラピュタ』のクライマックスで、ヒロインが放つ「人は土から離れて生きて行けないのよ!」という大好きなセリフがあります。自分が不動産の仕事を続けているのはコレだなと。海外に住むと日本のダメなところが沢山見える一方で、良い部分も沢山見えます。特にTOKYOのスゴさ。そりゃ世界から人が集まるわけだと。首都の元気がなくなれば地方もそうなります。不動産の仕事を通して、今いるアジアの国々に貢献するのはもちろん、東京をより魅力ある都市にできるよう寄与したいですね。