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自分が幸せになる「ナチュラルメイク」の定義とは?「日本のメイクスタイル」を東南アジアに広める仕掛け人

女性読者の皆さん!日本で暮らしていた時、日常的に目にするキャッチコピー「愛されメイク」や「モテメイク」などの流行に違和感を薄々感じつつ追っていませんでしたか?むしろ、“一体誰のためのメイク?”“何のためにメイクをするの?”という問いに、向き合ったことがある人の方が少ないのではないでしょうか。また、シンガポールに住んでからローカル流のメイク・コンセプトに日本とのギャップを感じて、“メイクとは何か?”を自身に問い掛け始める人もいるかもしれません。シンガポールを拠点に世界で活躍するメイクアップ・アーティストのMawakiさんは、そんな迷える女性たちに快活なトークで的確な答えを示してくれます。今回は女性にとってのメイクについて、Mawakiさんに話を聞きました。

 

 

―シンガポールを活動拠点に選んだ理由は?
当時、フランスかシンガポールかで迷っていましたが、運良くシンガポールのビザを取得できたからです。

 

―来星した時の印象を?
「果物、フルーツジュースが安いな〜!」と思いました。あとは、仕事の面での違いも感じました。例えば、日本では一次決裁、二次決裁、部長決裁……など一つの業務ごとに決められた段階を踏み、何かを完結するのに時間が掛かります。でも、シンガポールにはそのようなプロセスを飛ばしていける良さ、仕事効率の良さがあります。メイク業界でいえば、日本では師匠に十数年ついて修行した後、やっと活躍のチャンスが巡ってくるかこないか、という感じです。シンガポールはそのような作法やしがらみはありません。

 

―これまでで印象に残っている仕事を教えてください。
次世代に向けた活動をしたいとずっと考えていたのですが、海外に出てから凄く印象に残っていることがあります。

 

 

2016年にタイの名門大学『Mahidol University』と『Siam University』に講師として招聘されました。今後も、お招きがあればできる限り様々な国をまわって、次世代含め各国の人たちに僕のメイクスタイルを広げて行きたいです。自分自身が高校中退なので、まさか海外の権威ある国立大学で授業をするとは思いもよりませんでした!(笑)

 

―そもそも、なぜメイクアップ・アーティストになろうと思ったのですか?
私は、シングルマザーの家庭で兄弟とともに育ちました。苦労しながらもその影を子供の前では見せずに頑張る母親の姿を見てきました。母親の明るさのおかげで、家庭内は明るく、私もとても幸せな幼少時代を過ごしました。それで、女性のチカラは偉大だなと感じ、「女性が笑顔になり、その幸せが周りにも返っていくような仕事をしたい」と感じたことがきっかけです。

 

初めてプロのメイクさんの仕事を見た時に凄くカッコいい仕事だなと感じた事もよく覚えています。

―“メイクと内面の幸せ”のつながりを強調されていますね。
“自分”が幸せになるメイクが最も大事です。例えば誰かに「きれいだね」と言われることも嬉しいし、鏡で見る自分の顔に対して「今日も私、イケテル!良い顔だな!」と思えたら、嬉しい気持ちになって自分に自信が持てますよね。本来の自分とかけ離れた姿に変身するというよりは、一人一人の持ち前の良いところをそのまま生かしたメイクによって、ハッピーなエネルギーが増幅し、自分に幸せが返ってくるイメージです。

 

 

私の得意な美肌メイクも、厚塗り感のない美肌に見せるナチュラルメイクです。

 

―ナチュラルメイクは、日本人女性がメイクの際大切にする感覚ですよね。シンガポール人と日本人で好まれるメイクに違いはありますか?
シンガポールでは圧倒的にセクシーなメイクが好まれます。しかし、最近ではナチュラルメイクの依頼が多いです。でもナチュラルのイメージが国によって違いますので、そこに最初は戸惑いを感じました。

 

―ナチュラルメイク、というコンセプトがまだ新しいのかもしれませんね。
日本だけが特別なのだと思います。面白いのが、シンガポールで 「ナチュラルメイクで」というオーダーを受けて、実際にナチュラルメイクに仕上げると、薄すぎると言われることがあります。つまり、ナチュラルメイクという言葉ひとつをとっても、国によってそのイメージは全く異なるのです。アジア人の思うナチュラルメイクを日本人が見ると、濃すぎる!と感じる人が多いでしょう。

 

また、シンガポール人のメイクアップ・アーティストやクライアントは、ナチュラルメイクは“短時間で済ませる手抜きメイク”だと勘違いしている人が多いように感じます。しかし実際は、ナチュラルに「みせる」メイクなので、私の場合は1時間以上かけて丁寧に作り込んでいきます。

 

―シンガポールは、日本のように女性誌でメイクの流行や、方法を学ぶ機会がありませんよね?
その通りです。女性誌のメイク特集も欧米人モデルが多いので参考になりにくいですし、「メイクの流行がない」と言っても過言ではありません。

 

―フリーランスとして起業、仕事をしてきた中での苦労は?
各国にはローカルのメイクアップ・アーティストが星の数ほどいます。彼らは主にウェディングの仕事をすることが多いのですが、雑誌の仕事を無償で受けるアーティストが多々いるために、私にも同じ感覚で無償での仕事依頼が来ることがあります。これはメイクアップ・アーティスト全体の仕事の価値を下げることにもつながり、よろしくないことだと感じています。

 

―メンターはいますか?
『魔法の質問』で有名な、マツダミヒロさんです。彼を通して、より自然体でいることの大切さを学びました。

 

―先日開催された日本人会メイクアップセミナーでも出し惜しみなく知識を披露していました。“Give”をし続けるモチベーションは何ですか?
知識やノウハウを与えることで、その人がよくなっていくのを見るのが喜びだからです。「この人は自分の良さを知らず、何年も自分の美を活かさずに過ごしてきたのかな、もったいない!」と感じることもあります。自分の中に眠った美を、引き出すこと、それによりもっと笑顔になる自分、周囲の人にも幸せが及ぶ好循環を、ぜひ想像してみてください。

 

―今後の活動予定や、目標は?
まずは私のひとひねりを加えたこだわりの化粧品を世界に送り出します。シンガポールを皮切りに、様々な国でメイクの学校も開きたいです。

 

そして、現在アジアで活躍するメイクアップ・アーティストは香港や台湾の人が多いので、そこに日本人の存在感をみせつけてやりたいですね。(笑)

 

Mawaki
メイクアップ・アーティスト、美容コンサルタント(化粧品)

 嶋田ちあきメイクアップアカデミー卒業後渡仏、ヨーロッパ、オーストラリアに滞在しメイクの知識を深め経験を積む。2012年来星、起業しシンガポールを拠点に各国でメイクアップ・アーティスト、美容コンサルタントとして活動中。ミス・ユニバースジャパン元ナショナルディレクター、イネス・リグロン女史主催「イネス・スタイル」や同女史主催カンボジアのチャリティーイベントでメイク講師を務めたことも。シンガポール国際映画祭ではオスカー賞を授与するアカデミー会長のメイクを担当、テレビCM、広告撮影メイクなどでは著名人やセレブのメイクを担当している。
 日本の美容業界誌WWDにて次世代を担うメイクアップ・アーティストとして取り上げられる。その他各国の雑誌からの関心も高く、今アジアで最も注目されているメイクアップ・アーティスト。
 9月にはシンガポールで少人数限定メイクアップセミナーを開催予定。http://www.mawaki.org / instagram: mawaki.makeup