Welcia-BHG (Singapore) Pte Ltd　「差別化を以て戦わずして勝つ」の社訓を引っ提げ上陸

ぶれることのない社訓

Welcia-BHG (Singapore) Pte Ltdは、日本の関西以東に支店網を広げる調剤併設型ドラッグストアチェーン ウエルシア薬局を中核事業とするウエルシアホールディングスと、現地デパートBHGのジョイントベンチャーとして設立された。日本のウエルシア薬局は、「差別化を以て戦わずして勝つ」の社訓を掲げ、調剤併設、カウンセリング、深夜営業、介護を軸とし、専門性を持ち多様なニーズに応える「ウエルシアモデル」で同業他社との違いを市場にアピールしている。シンガポールにおいても日本同様、調剤併設ドラッグストア Welcia-BHGをチェーン展開するが、「事業戦略は現地に合わせている」と松本氏は語る。

商品展開は、健康や美への意識が高い人たちのニーズを満たすものを広く扱いながら、専門性も高めることで差別化を図るべく、いわゆる「青汁」系のものなど、他店では売っていない日本の商品を、品数、価格、陳列で魅力を感じさせる品揃えにしており、売り上げは好調。また、ネット通販を好む人の多い当地で、店舗に顧客が足を運ぶ意義を持たすべく、日本のように、広く深い商品知識を持つ販売員が笑顔でライトカウンセリングできるような教育システムを構築している最中という。ここまでは日本と共通する部分があるが、シンガポール上陸にあたりウエルシアが練って来た戦略はさらに深い。

事前の綿密なリサーチにより練り上げた戦略

現時点での店舗展開は、2017年11月にブギスのBHGに1号店が開店したのを皮切りに、翌12月にはMRTイーシュン駅直結の大型ショッピングモール Northpoint Cityに2号店が開店。2018年6月には同じくイーシュンの大型コンド併設のショッピングモール The Wisteriaに3号店が開店予定。これらの立地はランダムに選ばれた訳ではない。ブギスのBHGは「都市型店舗」、Northpoint Cityは「郊外の大型モール内の店舗」、The Wisteriaは「住宅地の生活密着型店舗」という、シンガポールでの店舗展開の主要なパターンのモデルとなり、今後の戦略構想につなげる実験ができるよう考えられた先発の3店舗なのだ。また、日本から持ち込む商品の割合や価格についても事前の綿密なリサーチを踏まえ設定済みで、特に価格は日本のウエルシアのものの120％以内に納めるという。これは、店頭で日本での価格をスマホで調べ比較して購入を決めるローカル客が多いことに気づき、できるだけ日本での価格に近付けるべく、マレーシアのフリーゾーンを利用するなど流通に工夫を凝らすことにより実現可能にした。

「戦略の話なら何時間でもできます」と目を輝かせて語る松本氏からは、新たな地で一から事業を進めることを楽しんでいる様子が伺える。メディア露出の多発よりも、高速展開により認知度を高める方針といい、近い将来、新店舗のオープンをあちこちで目にすることになりそうだ。新しい店舗を目にするたび、どんな戦略によるものかを想像するのも楽しみでもあり、なにより日本のものが安く手に入る店が増えるのは嬉しいこと。今後のWelcia-BHGの展開から目が離せない。