AsiaX

第12回 シンガポールでの空売り取引

アジアエックス1月号では、空売りとは何か、どのような株を対象に、どのように取引を行うのかなどを三方さんに説明していただきました。今回はその続編です。空売りのことをもう少し勉強したら、良さそうな銘柄を見つけて実際の取引もやってみたい、と意気込んでいた担当者ですが……。

 

空売りができる証券口座とは?

AsiaX:三方さん、自分の口座でも空売りが可能かどうかを確認しておこうと思って、銀行のオンライン取引のヘルプ画面で“margin”や“short”をキーワードにして探してみたんですが、情報を見つけられませんでした。空売りは英語では“margin selling”や“short selling”であることを調べてそのようにしたんですが、探し方が良くなかったんでしょうか?

 

三方:実は一つ、残念なお知らせがあります。スタンダードチャータード銀行に現在お持ちの証券口座では、空売りを含めた信用取引はできないようです。

 

AsiaX:なるほど、そうでしたか……残念です。それって何を確認すれば分かるんでしょうか?

 

三方:口座の名前でわかります。空売りができるのは通常、信用取引口座(margin account)です。シンガポールで空売りを実践する場合は、下記のようなブローカーで信用取引口座を開設する必要があります。

 

SAXO Capital Markets
デンマークの銀行系証券会社
www.home.saxo/en-sg

 

City Index
米金融大手シティグループ、FX(外国為替証拠金取引)やCFD(差金決済取引)に特化
www.cityindex.com.sg

 

Interactive Brokers
米系証券会社
www.interactivebrokers.com

 

TD Ameritrade(thinkorswim)
米系証券会社
www.tdameritrade.com.sg

 

私は使いやすさの面でTD Ameritrade (thinkorswim)を利用しています。会員登録を行うには、ウェブサイトの登録フォームに記入後、下記の資料をアップロードします。

 

● パスポート
● 就労ビザのコピー
● 住所証明(直近3ヵ月以内の光熱費請求書等)
● 給与証明(前年の課税通知書でも可)
● W-8BEN(アメリカ居住者でないことの証明する書類)など

 

その後、指定の銀行口座に投資用の資金を送金すれば、準備完了です。

空売りのポイント

三方:今回実践することはできませんが、せっかくなので空売りについてもう少し掘り下げてみましょう。まずは、注文をエントリーするタイミング「エントリーポイント」についてです。

 

大きく以下の3つがあります。

 

1. 上昇トレンドから下降トレンドに転じる時
上昇トレンドが終わって支持線となる移動平均線まで下落した後、多くの場合は反発してある程度までは上昇します。もしまだ上昇トレンドならこのまま前の高値を更新して上昇していきます。しかし、下降トレンドに入るタイミングであれば、前の高値に達することなく、途中で更に下落します。そのポイントを狙う方法です。

 

2. 支持線より下にブレイクした時
価格が一定の価格帯を行ったり来たりするボックス相場の場合、支持線を下回って下落した場合は、更に大きな下落となる可能性がありますので、そのポイントを狙います。

 

3. 下降トレンドにおいて抵抗線で反転して下落した時
数ヵ月以上に渡って下降トレンドが続いている場合、抵抗線となる移動平均線までに上昇すると、そのあとは下落します。その下落し始めたタイミングでエントリーを行います。

 

空売りは基本的に数週間~数ヵ月の短期での取引が基本です。通常の買いのエントリーよりも値動きを注意して見ておく必要があります。

 

AsiaX:支持線と抵抗線って、何でしたっけ?あと、移動平均線も……。

 

三方:支持線は、ある一定の期間の中での株価の下限値のことです。その逆が抵抗線で、ある一定の期間の中での株価の上限値のことです。移動平均線は、一定の期間の株価の平均値を線としてつなぎ合わせたもの。チャートを見る際、株価がどの水準にあるのかを確認するために投資家の間でもよく使われる指標です。あれ、先月「チャートの見方にも慣れた」って言ってませんでしたっけ?

 

AsiaX:あはは、慣れたつもりでしたがまだまだでした。支持線と抵抗線と移動平均線の見方も勉強しなおしておきます。

 

三方:空売りについて、もう一つ決めなければならないのが「ポジションサイズ」です。

 

AsiaX:すみません、まず「ポジション」の意味がよく分からないのですが……。

 

三方:ポジションとは、つまり「何株分(いくら分)を取引するか」ということです。空売りでの取引数は、基本的に買いの時とほぼ同じですが、損切り価格がエントリー価格より高くなる点が違いますね。

 

空売りのポジションサイズ(何株分取引するか)の計算式は以下です。

 

(取引当たりの許容リスク(%)x 投資資金総額)÷(損切り価格 - 購入価格)

 

AsiaX:売りのための株数の計算にも同じ式を使うんですね!覚えておきます。

 

今回のまとめ

◆ 空売りを行うには信用取引口座(margin account)が必要

空売りを行う場合は、信用取引口座(margin account)が必要ですが、金融機関によっては証券口座(brokerage account)のみということも。その場合は別の金融機関で信用取引口座を開設する必要があります。

 

◆ 空売りの肝はエントリーポイント

空売りでは、どのタイミングで取引を行うか、そのエントリーポイントの見極めが重要。株価のトレンドをより正確につかめるように、チャートの読み方もたくさん練習しましょう。