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第5回 良かれと思ったことが裏目に出る男女脳

部内会議で決まった新企画案は、社長の承諾が得られるか危ぶまれるものだった。しかし、なんとか社長に快諾してほしいと、男性脳の部長は関係部署に根回しをして、担当役員にプレゼンして、と段取りを考えていた。そんなとき、入社2年目の女性脳社員が、「部長、あの新企画、さっき社長とすれ違った時に話したら、OKですって。これで、すぐに取り掛かれますね!」と得意げに報告。部長は、つい、「そういうことは私を通すように」と怒鳴ってしまった。

 

さて、このとき女性脳は、なぜ男性脳が怒ってしまうのかわかりません。臨機応変な女性脳は機転を利かせて、難題の社長の承認を取ることができたのだから、ほめられてもいい快挙なのに、なんで不満なの?部長や部署のみんなのために良かれと思って頑張ったのに、と。

 

空間認識から秩序を重んじる男性脳
機転を利かせて階層を飛び越える女性脳

 

男性脳は、女性脳が役職を超えるという秩序を乱すことが大変不快で、理解できません。社長の承認が取れたのはよかったのですが、勝手な女性脳のせいで、他部署の協力をどう得るか、担当役員になんと言ったらいいのやら……と後始末が大変です。

 

男性脳は、空間認識に長けていて、人間関係の上下の位置にも敏感なのです。会社の組織や取引先、株主、お客様などの関係も俯瞰しています。社内の男性脳全員が、無意識に階層組織の秩序を保って仕事をしているのを女性脳は知らないので、新入社員教育で、社内秩序の説明が必要だったのです。

 

 

多くの組織で、階層組織の秩序を守るのが当たり前なので、女性脳にこの教育をしません。このため、女性脳が頑張って働けば働くほど、社内評価が下がってしまうということが起きます。会社のため、顧客のために、チャンスと思ったら、上司に相談なんて後ですればいいと臨機応変に動き、仕事の成果を上げ、本人も、とても熱心に仕事をしていると思っているし、業績も顧客の評判も大変いいので、自分が思うほど社内評価が高くないことに女性脳は不満を募らせます。顧客や取引先から人気の女性脳ほど、報われない気持ちで会社を辞めてゆくことになるのは、こういった背景があるからなのです(実は、あまりにも古い秩序なら、女性脳の行動が組織改革にもつながって、良い効果を生む場合もあるので、秩序教育をしない女性脳が必要な会社もあります)。

瞬時の判断を下す際、行動や受け止め方に
男女脳には差があることを覚えておく

冒頭の会社にとっても、優秀な女性脳がいなくなるのは損失ですね。残念な結果を招いてしまうのは、男女脳の違いを知らないから。仕事のスキルなどの学習で得る能力は男女脳でほとんど差がないのですが、男性脳と女性脳は、とっさの快不快、良いと思うことが違うのです。

 

男性脳が、良かれと思って女性脳の提案にダメ出しをする、という話を前回お伝えしましたが、提案以外でも、共感してほしい女性脳からの話しかけに、まず否定で返す男性脳は、女性脳をひどく傷つけています。男性脳に悪気はないのですから、なぜ人間関係が悪くなるのか、わからないですよね。

 

互いに相手の良いところが、理解できないだけでなく、不快に感じてしまうのは、本当に残念です。けれども、全く違う感性の男女、これが遺伝子に書き込まれた最強のしくみなのでしょう。人類が誕生してから今までずっと種が繁栄してきたのですから。私たちは、この男女脳の違いに振り回されずに、教育プログラムを作ったり、社内改革をしたりと、その会社にあった活用をする段階にきています。

 

※ここで言う「男性脳」「女性脳」は下記です。
男性脳:右左脳をつなぐ脳梁の連携をあまりしないタイプの脳のこと
女性脳:右左脳をつなぐ脳梁の連携が頻繁なタイプの脳のこと