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第9回 株を借りて、売り&買いで利益を出す?― 空売りのしくみ

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米国株式市場は2017年12月に入っても引き続きダウ平均株価が最高値を更新中で、買い銘柄を見つけるのが難しい時期が続いています。そこで今回は、前回12月号のポートフォリオの組み方の解説で「売り」で利益を出すという話があったことから、売りの取引方法のひとつである株の「空売り」について、三方さんにより詳しく説明していただきます。

 

「空売り」って何ですか?

 

AsiaX:「空売り」って聞いたことはあるんですが、どのような取引なんでしょう?通常の株の売買とは違うんですよね。

 

三方:通常の株は「安く買って高く売る」ことで利益を得ますよね。空売りはその逆で、「高く売ってから安く買う」という方法です。厳密には、売るために株式を証券会社から借りてきて、それを売ります。

 

AsiaX:「株を借りる」ということですが、私のように投資経験が浅くても証券口座を持っていれば借りることができるのですか?

 

三方:空売りもできる証券会社の口座を持っていれば、という条件が付きますが可能です。証券口座によっては買いのみの場合もあるので、その点は注意が必要です。

 

AsiaX:そもそもなぜこのような取引ができるようになったんでしょうか?証券会社が保有する株ならば、証券会社がそのまま投資信託などで運用された方が、利益が出る可能性が高いのでは?と思ってしまったのですが……。

 

三方:証券会社は、自社の保有株を貸しているのではなく、株式をずっと動かさずに保有している安定株主から借りて、投資家に貸しています。証券会社の利益は、空売りした時と買い戻した時の売買手数料に加え、貸株料もあります。貸株料は期間が長いとより儲かります。よって、証券会社にとっては、儲けしかありません。投資家としても、下降トレンドの時や、これから株価が下がると見込んだ会社がある時に、空売りを利用することによって、収益の機会を増やすことができます。

 

空売りの方法

AsiaX:空売りに適した株って、どういう株なんですか?

 

三方:基本的に「買い」の条件の逆を満たす銘柄を選びます。ファンダメンタルズ分析、つまり財務状況や業績を基に企業の本質的な価値を分析する際は、売上や利益の成長率が右肩下がりであることを確認します。また、テクニカル分析、つまり過去の値動きの傾向やパターンから今後の株価の動向を予想する際は、下降トレンドであることを確認して銘柄を選びます。

 

AsiaX:なるほど、簡単に言うと最近あまり元気がない会社の株、ということですね。空売りする株を選んだら、証券取引口座の取引画面から注文できるんですか?

 

三方:その通りです。注文方法はとてもシンプルで、銘柄を選択して、買いではなく売りを入れればよいだけです。他には特別なことは不要です。

AsiaX:借りた株を売るタイミングや、買い戻すタイミングは自分で決められるのでしょうか。

 

三方:もちろんです。日本株の場合は返却期限が決まっている銘柄もありますが、米国株の場合は特に買い戻し期限もありません。ただし、長く借りればその分手数料も多くなってしまいます。また、これは買いの注文でも言えますが、指値注文の場合には自分の好きなタイミングで決済できない場合もあります。

 

AsiaX:借りた株を売った後、買い戻そうとしたら株価が上昇基調になってしまった場合は、どうすればいいんでしょう?借りた株を返すためには買うしかありませんが、売った時より高い株価では結果的に損をしてしまいますよね。

 

三方:その通りです。株価の下限は0ですが、上限は理論上ありません。すなわち、空売りの場合は損失が無限に大きくなる可能性があるということで、そこが買い注文よりもリスクが高いと言われるゆえんです。そのため、空売りの場合でも、リスクとしてどこまでの損失は許容するかを決めておいて、しっかり損切り注文を入れておく必要があります。これにより、万が一上昇トレンドになった場合でも、想定範囲内の小さい損失に留めることができます。
株価は長期的に上がるものと期待されているものなので、空売りの場合は買い注文以上にしっかりトレンドの転換を注視しておく必要があります。

 

 

今回のまとめ

◆株を上手に借りて、上手に返して利益を目指す
空売りは、証券会社から一時的に株を借りて、同じ株数を返却するまでの間の株価の値動きを上手に使って利益獲得を目指す方法。その準備として企業の業績データや、過去の株価の変動などを見てみると、何によって株価が動きやすいのかなどの傾向も分かるでしょう。

 

◆しっかりとリスクコントロールの方法を知ろう
一般的に、空売リはリスクが高いため、買いから始めたほうが良いとは言われています。ただし初心者でも、自分が取れるリスクの範囲内で行うことで、利益を得る機会を増せます。リスクをコントロールする方法をしっかり
学びましょう。