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第1回 男女の脳の構造

同僚の女性から、職場の愚痴をさんざん聞かされ、「こんな会社、辞めたい!」と彼女が言うので、彼女のためを思って、「そんなに嫌なら、辞めれば?」と言ったら、「そんな話をしてるんじゃないの!」と怒られた……こんな経験はありませんか?男性にとって、女性は不可解なもの。実は、女性にとっても、男性は不可解なものなのです。

 

セクハラなどの職場のリスクは、自分と相手の言葉や行動の感じ方の違いが原因になっていることがあります。職場の対人関係では何かと問題が起こりやすいものですが、特に異性間ではなかなかうまくいかないと感じる方も多いのではないでしょうか?

 

実は脳にも性差があって、この違いを知らなければ「相手も自分と同じことを思っているはず」と思い込んでしまい、良かれと思ってやったことが恨まれたり、絶望されたりしてしまう原因になることがあります。

 

男女の脳に違いがあると言っても、もちろん個人差もあるので、全ての方にあてはまるというわけではありません。それでも一般的に「平均身長は男性のほうが女性より高い」とか、「女性のほうが男性より長生きをすることが多い」などの傾向はあるのです。

 

さて、では男女の脳の違いについてお話ししましょう。男女の脳は、感性の領域において、その性質を大きく異にしています。感性の違いは、とっさの気分や感覚、快・不快のありようの違いを生み出します。このため、ある言動が男性のモチベーションを上げる一方、女性のそれを著しく下げることもあり得ます。

 

職能ではなく、感性が違う

脳には、思考の領域と感性の領域があります。思考の領域の多くは、学習によって後天的に形作られるもの。したがって、同じ教育を受けた者同士の職能について、男女によって差が生じるわけではありません。しかし、感性の領域は大きく違います。ここで言う感性は、とっさの感覚、快・不快の気分のことです。

女性脳と男性脳は、右脳と左脳の連携密度が違う

脳には、男女間で多くの違いがありますが、コミュニケーション上の行き違いを生み出すのは、主に、のうりょう脳梁という場所の太さの違いです。私たちの脳は、俗に「右脳」と呼ばれる右半球と、「左脳」と呼ばれる左半球に分かれており、これらは別々の役割を担っています。

 

 

通常、左脳には言語機能が優位に局在していて、顕在意識と直結しています。左脳は「顕在意識とことばの領域」です。脳の持ち主が意識して行っていることのほぼすべてが、言語優位側を介して出力されるので、脳科学上は「優位半球」と呼ばれます。これに対し右脳は、潜在意識のもとにあり、イメージを作りだす役割を担当しています。右脳は「感じる領域」です。

 

脳梁は、この2つの半球の脳神経細胞ニューロンをつなぐ神経線維の束。感じる領域の出来事を顕在意識につなげ、言語や数字、記号として表現していく際に使われます。この神経線維の束である脳梁は、太さや神経線維の本数に個人差があります。その太さは胎児期に決まり、男性ホルモンの影響を受け男子胎児の脳梁は発達を抑制されます。このため脳梁は、生まれつき女性の方が男性より太く、神経線維の本数も多いのです。すなわち、女性脳は男性脳に比べて「感じる領域」と「顕在意識とことばの領域」がより密接かつ頻繁に連携しているのです。このことが、女性脳と男性脳の、とっさの快・不快のありようを大きく分け、互いの特性を作りだしています。

 

次回は、具体的に職場で起こる男女脳のすれ違い、特に良かれと思ってしたことが裏目に出てしまった事例について紹介します。