AsiaX

シンガポール個人所得税の注意点とは?

税金と聞くと「難しそう」、「申告が面倒」などネガティブなイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、税金は私たちの生活とは切っても切り離せない存在です。ここシンガポールで働くなら、制度や注意点など、きちんと把握しておきたいところです。そこで今回は、シンガポールで長年にわたり税金に関する相談業務などを手がけてきたTricor Singapore Pte. Ltd.の斯波澄子さんをお迎えし、シンガポールにおける個人所得税の基礎から課税、控除などについて幅広くお聞きしました。

 

Tricor Evatthouse Corporate Service(A division of Tricor Singapore Pte. Ltd.)
Manager
斯波 澄子さん

 

1995年よりシンガポール在住。世界四大会計事務所の1つPriceWaterhouseCoopersに勤務後、2007年よりシンガポール最大手の法人秘書業務会社Tricor Singapore Pte Ltdに入社。主に日系企業向けに、会社設立、会計、税務、秘書業務など法人税務に関する相談業務を手掛ける。クライアントが何でも気軽に相談できる、会社のジェネラル・ドクターを目指している。

 

TAKARA BELMONT SINGAPORE PTE. LTD.
Purchasing & Logistics Manager
井寺 美樹さん

 

理容・美容・歯科・医療向け設備機器の製造・販売などを手がけるタカラベルモントの大阪本社で3年間、東アジア向け歯科用チェアの営業や、医療機器の登録業務に従事。2014年のシンガポール現地法人設立後、第2期立ち上げメンバーとして、2016年4月に来星。本社での業務経験と学生時代の留学経験を生かし、業務のローカル化と現地での理美容事業への新規参入に向けた仕組み作りに奮闘している。

 

YOURWIFI PTE LTD
CEO
古川 智大さん

 

大学在学中にニューヨークへ留学。帰国後、上場企業へIR支援を行う企業で、インターンとしてメディア運営、法人営業を担当。その後、IR支援を包括的に行うバニラックスLCCに参画。2011年に日本で動画制作会社、2013年に香港でWEB製作やオフショア開発などを行う会社を起業。香港の事業を継続しながら、2016年8月より当地でWifiレンタル事業を手がけるYourwifiSGのCEOに就任し、事業を拡大中だ。

 

ACCEA Singapore Pte. Ltd.
Sales Director
齋藤 涼さん

 

米国留学で感じた日本の良さを広めたいと思い、帰国後、外国人向けに日本文化を発信する店舗の運営責任者となる。2012年にアクセアに入社、営業職を経て店長を経験し、2016年に来星。現在はダイレクターとしてシンガポール店舗を統括する。名刺、封筒、ポスター、製本などのオンデマンド印刷サービスを提供しており、スピードとクオリティーを両立しつつ、顧客の要望に柔軟に対応するよう心がけている。

 

DRILLING INFO PTE. LTD.,
Customer Support Consultant
輿水 桃子さん

 

2016年4月に来星。米国シカゴに本社を置くソフトウエア開発企業Global View Software, inc.(現DRILLING INFO PTE. LTD.,)のシンガポール支店で、唯一の日本人社員としてカスタマーサポートを担当。幼少期の米国生活で培った英語力を生かし、日本以外のアジア・中東各国のクライアントも担当する。休日はプロサッカーチーム、アルビレックス新潟シンガポールのチアリーダーとして活躍している。


AsiaX:本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。今回の座談会ではシンガポールの個人所得税について、いろいろとお聞きしたいと思います。
斯波さん、まずはシンガポールに住む日本人が知っておくべき、個人所得税の基本的な事柄についてお聞かせ下さい。

 

斯波:日本の所得税は、勤め人の場合は基本的に給与から源泉徴収されるので、他に所得があったり医療費控除を申請したりする人を除き、源泉徴収票を受け取るだけで終わってしまうことが多いのですが、シンガポールでは自分で申告し、納税する必要があります。

 

AsiaX:所得税の対象となる期間や支払い方法について教えて下さい。

 

斯波:まず所得税の対象となる期間ですが、シンガポールも日本と同じで申告の前年の1月から12月の暦年を対象期間とし、申告期限はシンガポールの場合4月15日となっています。居住者の申告書は「Form B1」と呼ばれ、以前は印刷された申告書に記入して提出していましたが、現在は原則オンラインで申告します。
通常は4月15日までに申告すると、7月頃には賦課決定通知書が郵便で送られてきます。賦課決定通知書を受け取る時期は人によってまちまちで、遅い場合には申告の翌年の3月頃に受け取る人もいます。税金の支払方法は、賦課決定通知書を受け取ってから1ヵ月以内に全額まとめて支払うか、分割で支払うかのどちらかを選ぶことができます。分割払いは、予め自動引き落とし制度(GIRO)を申し込むのが前提で、銀行から毎月決まった金額が引き落とされます。

 

AsiaX:オンライン申告はどのように行えば良いのでしょうか。

 

斯波:給与所得者の場合、まず事業主が「Form IR8A」と呼ばれる従業員の給与所得証明書を3月1日までに発行することになっています。従業員数が9名以上の事業所の場合、会社は証明書をオンラインで内国歳入庁(IRAS:Inland Revenue Authority of Singapore)に提出します。8名以下の事業所の場合は、従業員本人に証明書を手渡すことになっています。
会社が直接IRASに証明書を提出した場合、IRASのマイ・タックス・ポータル(税務申告サイト)にアクセスすると、自分の給与所得が自動的に入力されていますが、会社から証明書を手渡された人の場合は、受け取った証明書に基づいて自分で給与所得の情報を入力しなければなりません。また、給与所得以外の所得がある場合にも自分で入力しなければならないので、申告漏れがないように注意しましょう。

 

AsiaX:賦課決定通知書は人によって発行される時期が大きく異なるようですが、なぜでしょうか。所得額などが関係しているのでしょうか。

 

斯波:所得額は関係ないと思います。「賦課決定通知書」と呼ばれるように、シンガポールは賦課課税方式を採用しているので、納税者が申告しただけでは終わらず、IRASの検査官が納税者一人一人の申告内容を査定し、税額を計算して通知します。そのため、申告書を受け取った順番や内容の複雑さなどにより、人によって通知書が発行される時期に差が生じるのでしょう。所得税の申告は3月1日から受け付けているので、早めに申告すると賦課決定通知書も早く受け取れるかもしれません。

 

井寺:日本のように会社が申告や納税を代行したほうが簡単だと思うのですが、シンガポールでは昔から納税者が自分で申告や納税をしなければならない制度だったのでしょうか。

 

斯波:はい。日本では、税金を確実に徴収できるように、給与だけでなく利子、配当、報酬などの居住者への支払いについても源泉徴収が義務づけられていますが、シンガポールでは、所得税の源泉徴収は非居住者への特定の支払いに限られており、個人の給与所得については、居住者も非居住者も定められた申告期間に納税者が自分で申告して納税する仕組みになっています。

 

輿水:今年受け取った賦課決定通知書を見ると、計算された税額から更に20%が差し引かれていましたが、これはなぜでしょうか。

 

斯波:シンガポール政府が、今年度の予算案で、2017賦課年度(2016年の所得)について所得税の20%(最高で500Sドル)を控除すると発表したからです。政府は、景気が落ち込んでいたり物価が上昇したりしている時に、国民の生活を支援するために減税することがあります。税額控除は毎年ある訳ではなく、ある場合もその金額や割合は年度によって異なります。税額控除が発表された場合、既に帰国してシンガポールにいなくても、対象となる年度に183日以上シンガポールで働いて納税していれば、税金が還付されます。
還付は、GIROによる分割納付を行っていない場合、通常は小切手がIRASに登録された住所に郵送されます。小切手を換金することができない場合、IRASに文書で依頼すれば、銀行為替手形(Bank Draft)や電子送金により還付金を受け取ることも可能です。心当たりがある人は、自分宛の還付金がないかどうか、IRASに問い合わせてみるとよいでしょう。

 

AsiaX:受け取った賦課決定通知書に記載されていた金額が、自分で計算した税額と違っていたという話を聞くことがありますが、これはなぜでしょうか。

 

斯波:税務検査官が納税者と異なる判断をして税額を計算したからだと思います。受け取った賦課決定通知書の内容や金額に納得できない場合は、異議申し立てができます。その場合は、申し立ての内容にその根拠となる資料を添えて、通知書の発行日から1ヵ月以内にマイ・タックス・ポータルからIRASに提出します。
賦課決定通知書を受け取ったら、税金を支払う前に自分が提出したForm B1の内容と受け取った通知書の内容を見比べて、申告通りに課税されているかどうかを確認しましょう。駐在員の方で、会社が会計事務所に申告を依頼してくれた場合は、受け取った通知書を会計事務所に送れば、IRASの計算に問題がないか確認してくれます。

 

古川:毎年4月に前年の所得を申告し、それから数ヵ月後に納税するとなると、その前に帰国しなければならなくなるといった例もありますよね。その場合はどうすればいいのでしょうか。

 

斯波:外国人の場合は、シンガポールを出国する前に必ず所得税を精算しなければなりません。帰国の場合も含め、外国人が退職することになった場合、事業主は退職の1ヵ月前までにIRASに申告し、退職通知を受け取ってから退職日までに支給するはずの給料を全て支払わずに留保し、税金を支払い終わった後に残金を本人に支払うことになっています。帰国するまでに税金の精算が間に合わない場合には、残金の受け取り方法について事前に会社と話し合っておくとよいでしょう。仮に本人が税金を滞納したまま退職した場合、事業主は本人に代わって税金を精算する義務がありますので、人事担当者は注意しましょう。

 

齋藤:年度の途中で転職した場合、どのように所得税を支払えばよいのでしょうか。

 

斯波:シンガポール国籍の従業員の場合には、年度の途中で転職しても、通常の申告期間に1年分の所得をまとめて申告すればよいのですが、外国人の場合には、先ほども説明したように、退職する前に事業主が本人に代わって所得税を精算することになります。シンガポール国内で1年に何回も転職した場合には、その都度税金を精算しなければなりません。ちなみに、2回目以後の精算では、前の勤め先の分も含めて1月1日からの所得を一旦全て合算して税金を計算した上で、未納分の税金を納付することになります。


 

AsiaX:知り合いの会社で新しく雇われた従業員が、前の勤め先で発生した所得税を滞納していたため、新しい勤め先である会社にIRASから所得税を給与から天引きして納付するよう指示する通知が送られてきたと聞きました。このようなことが起きないため、会社側が取るべき対応について教えて下さい。

 

斯波:その人を採用する前に、前の勤務先で所得税の支払いをきちんと済ませているかを確認するとよいでしょう。賦課決定通知書と合わせて、納付の記録を見せてもらうようにすれば、より確実でしょう。所得税が未納であることが分かった場合には、その人に支払う最初の月の給料から天引きしてIRASに納付すればよいでしょう。

 

AsiaX:就労ビザの発行日と実際にシンガポールで働き始めた日が一致しない場合、シンガポールで申告する所得は、就労ビザの期間に合わせた方がよいのでしょうか。

 

斯波:外国人雇用法では、就労ビザの取得が免除される特殊な職種の短期就労(ただし、MOMへの届け出が必要)を除き、就労ビザがない状態で一日でもシンガポールで働くことは禁じられています。ですが、何らかの事情により発行された就労ビザの期間と実際にシンガポールで働いた期間が一致しなかった場合、所得税の申告に関しては、実際に働いた期間に従って申告するのが正しい申告方法です。

 

シンガポールでの課税項目は?

 

AsiaX:所得税について、現地採用者と駐在員で違いはありますか。

 

斯波:現地採用者の場合、給与体系は比較的シンプルですが、駐在員の場合には、シンガポールで受け取る現地給与以外に、本社から日本の口座に振り込まれる給与や日本の社会保険料、会社が負担する住居の家賃や子供の学校の授業料、社用車やゴルフクラブの会員権など支払元が複数あるほか、課税対象となる現物給与も多くあるので注意が必要です。
駐在員の方が、日本の口座に振り込まれた給与も課税対象であることを知らずに、シンガポールで受け取った現地給与のみを給与として申告していたため、申告漏れを指摘されて追徴課税を受けたというような事例もあります。シンガポールで働いたことによって得た所得は、日本から支払われたものでも全てシンガポールで発生した所得と見なされて申告する必要があるので、注意しましょう。

 

AsiaX:シンガポールは日本と違い、現物給与に対する課税が多いのも特徴ですが、どのようなものが課税対象の現物給与となるのか、簡単に知る方法はありますか。

 

斯波:現物給与については、「Form IR8A」とは別に「Appendix 8A」と呼ばれる証明書を発行することになっていますので、そこに記載された項目を見るとどのようなものが課税対象になるか知ることができます。

 

AsiaX:出張手当も課税対象になるのでしょうか。

 

斯波:原則として課税対象になります。ただ、IRASが国ごとに出張手当の限度額を決めており、出張手当の金額がそれを超えなければ免税、超える場合はその差額分について課税されます。

 

古川:ストックオプションは課税対象になるのでしょうか。課税される場合、どの金額が所得になるのでしょうか。

 

斯波:シンガポールで働いている間に付与されたストックオプションは、課税対象になります。付与されたオプションをシンガポールにいる間に行使した場合、株価と行使価額との差額が利益となり、その分に対して課税されます。未上場企業など株式の市場価額が算定できない場合には、一株当たりの純資産を株価として使用します。行使せずに帰国する場合には、帰国時の株価と行使価額との差額を所得と見なして課税します。欧米企業の場合、日系企業に比べてストックオプションを含む株式報酬の制度が充実しているので、注意が必要です。

 

AsiaX:企業が従業員に乗用車を貸与した場合、個人所得税の課税対象になりますよね。では、従業員が自分で買った乗用車を仕事のために使用した場合、減価償却費や自分で負担した道路税などについて、給与所得から控除することはできるのでしょうか。

 

斯波:シンガポールでは、個人も法人も乗用車に関する支出は所得控除の対象にはなりません。ただし、自分が所有する乗用車を運転して業務で客先を訪問し、走行距離に応じた実費相当分の払い戻しを会社から受けたような場合、その金額は課税対象にはなりません。

 

AsiaX:駐在員の場合、会社が一時帰国費用を負担することがありますが、こちらについても課税されるのでしょうか。

 

斯波:一時帰国費用については、外国人にとっての必要経費であるとして、これまでは費用の全額に課税するのではなく、本人と配偶者は年1回、子供は年2回までの帰省は、会社が負担した実費の20%、それを越える回数は全額が課税対象とされていました。しかし、所得税法が改正され、2018賦課年度(2017年の所得)からは帰省の回数に関係なく全額が課税対象となります。

 

AsiaX:シンガポールという国の立地上、複数の国をまたいで兼務することも多いと思います。例えばシンガポールとマレーシアを行き来している人の場合、所得税はどちらの国に、どのくらいの割合で支払うものなのでしょうか。滞在日数などが関係してくるのでしょうか。

 

斯波:これはケースバイケースですね。極端な話をすれば、どちらの国からも給与所得の全額について課税される可能性もあります。例えば、営業上のつながりが密接なシンガポールとマレーシアのグループ会社を兼務することになった場合、シンガポールの税務当局は「シンガポールの会社の業務の一環としてマレーシアに出張しているのだから、受け取った給与所得は全てシンガポールが源泉地であり、シンガポールで申告すべきである」と判断する一方で、マレーシアの税務当局も同じようにその給与所得は全てマレーシアが源泉地であると判断するケースが考えられるからです。
そのような事態を避けるには、兼務する際にシンガポールとマレーシアのそれぞれの会社での業務や待遇を明確に区別して雇用契約書などの文書に残し、シンガポールではシンガポールの会社の業務、マレーシアではマレーシアの会社の業務を行い、報酬もそれぞれの会社から別々に受け取るなど、曖昧にならないようにする必要があるでしょう。また、給与などの雇用条件を決める際には、それぞれの国の就労ビザの要件を満たすことも重要です。

古川:日本でも事業を行っていて収入がある場合、その所得は日本で申告するのでしょうか、それともシンガポールで申告するのでしょうか。

 

斯波:その収入が日本で申告すべき所得かどうかは、まず日本で税務上の居住者であるか非居住者であるか、次にその収入が日本の国内源泉所得に該当するかどうか、また日本に事務所などの恒久的施設があるかどうかなどによって異なります。その収入が日本で申告すべき所得にあたらない場合、所得の源泉地は恐らくシンガポールにあり、シンガポールで申告すべきだと思われます。その一方で、場合によっては、日本とシンガポールの両方でそれぞれ課税される二重課税になってしまう事例もあります。その場合、日本とシンガポールの間には租税条約がありますので、外国税額控除などにより二重に支払う税金の金額を少なくすることができます。

 

AsiaX:シンガポールでは、居住者と非居住者で課税に違いがありますか。

 

斯波:非居住者には所得控除が適用されず、給与所得については一律15%の税率で課税されます。居住者には累進税率が適用され、課税所得のうち最初の20,000Sドルまでは税率0%、つまり税金がかかりません。また各種の所得控除も適用されるので、居住者の方が一般的に有利です。

 

AsiaX:シンガポールと日本のどちらの方が住みやすいか、話題になることもありますが、やはり税金のことを考えるとシンガポールに住んだほうが得なのでしょうか。

 

斯波:そうですね。シンガポールは、居住者の場合、日本と比べて税率も低いので、日本とシンガポールの両方で事業を行っているような人は、シンガポールに本拠地を移した方が税務上は有利でしょうが、実際にはなかなかそう簡単に移住するという訳にはいかないようですね。

 

所得控除の対象は?

 

斯波:シンガポールで節税を心がけるには、控除についてもよく知っておくとよいでしょう。例えば、シンガポールでは職業に関連するセミナーや講習を受けたり、働きながら学位や資格の取得を目指して勉強し、そのための授業料や試験料を自分で負担したりした場合、年間5,500Sドルまで控除の対象になります。申請する場合には、領収書などの証拠を失くさないように取っておきましょう。また、シンガポールで認可されている保険会社で本人または配偶者を被保険者とする生命保険を契約している場合、支払った保険料のうち年間5,000Sドル(CPF控除と合わせて)まで控除することができます。

 

齋藤:寄付すると控除が受けられると聞いたのですが、寄付した金額に対してどれくらいが控除されるのでしょうか。また日本に寄付した場合も控除の対象になるのでしょうか。

 

斯波:シンガポールでは、寄付した金額の2.5倍が所得から控除されます。ただし控除の対象となる寄付の相手先は、シンガポールの公共機関(IPC: Institution of a Public Character)として認可されている慈善団体かシンガポール政府に限られます。寄付金控除は、シンガポール国民にとって利益となる寄付行為を奨励するためのものなので、海外の災害支援などの目的でシンガポールのIPCを通じて寄付した金額は、残念ながら控除の対象にはなりません。

 

AsiaX:他にはどのような控除があるのでしょうか。

 

斯波:居住者のうち、給与所得か事業所得か年金所得がある人は、55歳未満であれば1,000Sドル、55歳から59歳は6,000Sドル、60歳以上は8,000Sドルの勤労所得控除が受けられます。また、日本と同じように、家族を扶養し、その家族の年間所得が4,000Sドル以下であれば、配偶者控除として2,000Sドル、子どもの扶養控除として1人につき4,000Sドルが認められています。

 

AsiaX:シンガポール人だけでなく、外国人にも適用される控除もいろいろあるのですね。読者の皆さんの多くは、これらを活用することで節約につながると思います。それでは最後に、斯波さんから読者の皆さんへメッセージをお願いします。

 

斯波:シンガポールでは、自分で所得税の申告や支払いをする必要があるので、こういった手続きを経験することで、自分が支払う税金やその使われ方について考えるよい機会になると思います。また、申告する際に年収なども確認できますので、3年後にはこれくらい稼げるようになろう、など自身のキャリアをお金の面から考えてみるのも良いかもしれません。

 

 

AsiaXでは、シンガポールでの生活に関するさまざまなトピックについて座談会記事を掲載しています。現在、座談会のテーマおよび参加者の方を募集しています。取り上げて欲しいテーマがある、または座談会に参加してみたいという方は、editors@mediajapan.sgまでご連絡下さい。座談会へのご参加にあたり、当社から費用のお支払および請求はございません。お名前とお写真、発言内容について、紙面とウェブサイトへの掲載に同意いただけることが条件となります。