ケイ・ケイ・イー・シンガポール（KKE SINGAPORE PTE. LTD.）　大学・研究機関との連携で技術開発、シミュレーション分野で多様なニーズ

建築物の構造設計・解析ソリューションなどを提供する構造計画研究所は、クライアントである日系企業の海外進出などを背景に、シンガポールに現地法人としてKKE SINGAPORE PTE. LTD.を設立した。アジアの拠点としては、2007年に上海に駐在員事務所を設置したのに続き2ヵ所目となる。

1959年に建物の構造設計業務からスタートした同社、現在の事業領域は通信技術や防災・減災のためのソリューションなど幅広い。建築物の防災性の向上など、ビジネスや社会の課題を解決するためのコンサルティングサービスやITシステムを、企業や政府機関らに提供している。

事業の特徴のひとつが、国内外の大学や研究機関と連携し、新技術の実用化に取り組んでいること。金谷尚輝ダイレクターは次のように話す。「学術的な知識を実用化しビジネスに生かすという点で、当社は大学・研究機関と企業との橋渡し役と言えます。優れた大学や研究機関が多いことも、シンガポールに子会社を設立した理由のひとつです。」

海外展開する日系企業には海運、物流関係も多く、オペレーションズリサーチ技術を活用した事業効率化のためのITシステムなどへの需要が高いという。シンガポールを含めた東南アジアの企業へのアプローチも強化しており、シンガポールで有望視している技術のひとつが、測位衛星からのGPS(GNSS)用電波の品質を推定するソフトウェア「GPS-Studio」だ。GPSには、建物が多い場所では電波を正確に受信できず位置情報の精度が下がるという技術的課題があるが、同ソフトウェアを活用することでどの程度誤差があるかを推定できる。「シンガポール政府が車の自動運転技術の実用化を含めたスマートシティ構想を掲げていることもあり、位置情報に関する技術が果たす役割は大きいと言えます。」

このほか、液体の動きをシミュレーションするソフトウェア「Particleworks」も、製薬・バイオや食品関連企業向けの需要を見込む。世界的に注目を集めているiPS細胞といった再生医療の分野では、効率良く細胞を培養する方法を検討するためのシミュレーションなど、 バイオ・製薬関連企業の集積するシンガポールでもニーズがあるとの見方だ。

現地大学らとのネットワーク通じ顧客を開拓、外国籍社員も積極採用

営業活動については展示会への出展などに加え、大学や研究機関とのネットワークを活用。企業から寄せられる相談に対して、大学が同社のソリューションを紹介するといった形で広がりが期待できるという。海外展開の強化に向け、本社では外国籍社員も積極的に採用している。 シンガポールのほかインドネシアやマレーシア、ミャンマーなどから採用した人材に日本で働いてもらい、将来の海外展開における戦力として育てる。現在約570人いる社員のうち、外国籍は36人。多様なバックグランドを持った専門家集団として、さらなる発展を目指している。