AsiaX

ブランディング編 第5回 世界でブランド力を高めるには

「信」の旗を立てることからブランドが生まれる。その旗は、どこで、誰に、何を示すのか。これまで「幸せにしたい人」を明確にイメージすることの大切さをお伝えしてきました。今回はブランド力を世界へ届けるという視点で考えていきましょう。

 

その前に、世界における日本の状況を考えてみます。ご存知の通り2020年の東京五輪開催決定後、訪日旅行者数が2,000万人を超え、インバウンド需要と言われる経済効果を生み、ビジネス環境も変化を求められてきました。まさに日本の歴史上においても、世紀の大チャンスと言われる黄金時代の到来です。それではこの機に何が大きな武器になってくるのでしょうか。

 

先日のリオ五輪の閉会式で行われた「TOKYO 2020」セレモニーにおいても、日本のグッズ・マンガ・ゲームの人気キャラクターが世界に誇るブランドであることを知らしめました。さらにコスプレなどにも広がりを見せるジャパンカルチャーは、「KAWAII(かわいい)」という言葉を世界共通語にしました。このカルチャーが日本の文化や精神性を世界の人々に浸透させ、さらに興味・関心を集めている役割を果たしていることは間違いありません。そして、日本の感性・美的センスが世界の人々に伝わる下地づくりをしてくれています。これは、大いに活かせる武器でもあり、多くの気づき、学びも与えてくれます。「和食」の世界遺産認定も、より日本文化の深いところに興味・関心を導いてくれるでしょう。

 

この流れのポイントは、テクノロジー時代から感性への変化ではないでしょうか。かつて日本の武器はものづくりにおいての技術力でした。そして得意とする提供商品・サービスも機能性の優れたものでした。そこから利便性を追求し、楽しさを加えてきました。ここから先、何が必要でしょうか。それが感性・感覚。まさに目に見えない分野ではないかと思います。さらに求めたいものは「美しさ」。「最後まで美学の質を追求する必要がある」とこだわり続けることで世界を塗り替えたスティーブ・ジョブスは、日本の思想・文化に学び、美の世界観を作っていきました。未来予言書と言われてきたハリウッド映画も、日本の精神・文化を取り入れたものが続々と増えています。まさに今、世界のニーズが日本にあると言っても良いのではないでしょうか。

だからこそ、我々日本人に与えられた感性・美的センスを武器にしてほしいと思います。目に見える製造やサービスの「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」への置き換えはどんどん加速し、人間のできる仕事が限定されていきます。だからこそ、目に見えない分野で感性を使い、共感を集め、経験や体験を提供していきましょう。その分野において世界をリードする存在として求められているのが様々なジャンルにおいての日本ブランドなのです。

 

実践法の一つとして、掲げた「信」の旗が届けたい人たちのコミュニティの中心、つまりそのジャンルの発信拠点になることをおすすめします。特に現代はリアルタイムの時代。つながりたい人とのタッチポイントの作り方をしっかりイメージし、スピード感を持ちながら、相手の負担を取り除くサービスを提供しましょう。コミュニティの大きさは「幸せにしたい人」に「何を届けたいか」で変わってくるので大小ではありません。それよりも、「遊び心」をもって変化を楽しめる柔軟性が必要です。ここは共感を呼ぶ大切なポイントです。

 

時代や環境にあわせて、自社の商品・サービスを再定義することも大切だと思います。モノを売るのではなく、経験や体験を売る。例えば、あるスポーツ飲料商品は断食習慣のある国で、断食後の栄養補給に、という配布プロモーションを行い、その国でのポジションを確立させました。商品ではなく、体験を提供したのです。商品開発力に優れた知人の洗剤メーカーでは、売っているものは洗剤ではなく、「きれいな環境」「きれいな心」でいられる状態を売っていると言います。その思想に共感する人たちが集まり、ブランドが形成されています。

 

世界の中の自社ブランド(商品・サービス)をイメージし、再定義されてみてはいかがでしょうか。世界中にあなたの商品・サービスを待っている方が必ずいるはずです!