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マーケティング編 第5回 本物のマーケティングの実践 (3) お客様は一体何を買わないのか?

前回、お客様にあなたの商品やサービスを買っていただくためには、お客様自身が何を買うのかを理解しなければならない、というお話をしました。これに関連して、もう一つ当たり前だけれども多くの人がやっていないことがあります。それは、お客様に「なぜ」買う必要があるのか、すなわち買う理由を伝えるということです。

 

もう少し掘り下げると、そもそもなぜその商品・サービスを買う必要があるのか、なぜ「あなたから」買う必要があるのか、なぜ「今」買う必要があるのかを明確に伝えなければなりません。当然ですが、買う理由がないものをお客様が買うことはなく、あなたから買う理由がなければあなたが選ばれることはなく、今買う理由がなければいくらでも決断は先延ばしされます。だからこそ、お客様にあなたの商品やサービスを買っていただくためには、お客様に「なぜ」「あなたから」「今」買う必要があるか、という3つの理由をしっかりと納得していただく必要があるのです。

 

しかし実は、これだけでは不十分です。買う理由を伝えるということ自体、多くの人が見落としてしまっていることではありますが、それは本来当たり前のことです。お客様に買っていただくためには、最後にもう一つ大きなハードルを乗り越えなければならないのです。ぜひ、あなた自身の買い物を思い出してみてください。欲しいと思う商品があって、もう買おうと思っていて、いよいよ財布からお金を出す寸前まできた。でも、買うのをやめた。そんな経験はないでしょうか?

 

その時、なぜあなたは買うのをやめてしまったのでしょうか?「何か胡散臭いと思った」「もう少し待てば安くなるかもしれないと思った」「他にもっといい商品があるかもしれないと思った」「買っても使わないかもしれないと思った」「自分が想像していたものと違うかもしれないと思った」「店員の態度が気に入らなかった」「買って帰ったら家族に怒られるから(笑)」など、きっと様々な理由があると思います。

 

そうです。お客様は、たとえ買う理由に納得していたとしても、買わない理由があると、買うのをやめてしまいます。ですから、お客様に買っていただくためには、「買う理由を作ること」と同時に、「買わない理由をなくすこと」が必要なのです。ぜひ、なぜお客様が買ってくれなかったのか、その理由について考えてみてください。実際にお客様に聞いてみてください。そしてその対策をしてください。お客様が買わない理由には、ありとあらゆるものがあります。中には、売り手が想像していなかったことがネックになっていることだってあるのです。


最後に、お客様が買わない理由をなくす上で、最も大切なことをお伝えします。先ほど、お客様が買わない理由にはありとあらゆるものがある、とお伝えしましたが、最大の理由は、たった一言で表すことができます。それは、「リスク」です。先ほど挙げた様々な買わない理由も、つまるところ、買い物に失敗してしまうかもしれないというリスクです。つまり、お客様が買い物をする上では、ありとあらゆるリスクがあるということです。では、一体誰がそのリスクを負っているのでしょうか?

 

ほとんどの取引において、リスクにさらされているのは圧倒的にお客様の側です。買い物を後悔するのは買った後にしかできないのです。そして、その買い物が間違っていたと後悔しても、大切なお金は返ってきません。大切な時間は返ってきません。もっと大切なものを失うことすらあります。

 

一方、売り手の側は、どうでしょうか?提供した商品がお客様の思っていたものと違っても、お客様が満足できなくとも、お金を返す必要はありません。時間はそもそも返せません。もっと大切なものは、もっと返せません。

 

これがフェアな取引と言えるでしょうか?「約束した成果が果たせなければ、ご満足頂けなければ、費用は頂きません」といったような、お客様が負っているリスクを取り除き、会社が背負ってこそ、フェアな取引が成立するのです。つまり、営業においては、常に会社とあなたの器が試されているということです。その器以上に会社は大きくならないのです。売上は大きくならないのです。

 

「お客様が本当にリスクに感じているのは何なのか?」。ぜひそれを真摯に見つめ、他の誰よりも早く、誰よりも大胆に、そのリスクを取り除いてください。あなたのビジネスが飛躍することでしょう。