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「ビアードパパ」シュークリームをシンガポールで製造、世界へ

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人気シュークリーム店「ビアードパパの作りたて工房」を日本国内170店舗、および世界17ヵ国で約240店舗(2014年12月現在)を展開する株式会社麦の穂。シンガポールではすでに2002年から「ビアードパパ」を進出させた歴史を持つ同社が、昨年12月、新たな海外戦略の拠点としてMUGINOHO GLOBAL PTE. LTD.を設立した。

 

同社マネージングダイレクターの井上慶さんは、「シンガポールの工場が東南アジアなどの店舗で扱う製品の生産拠点となる」と話す。

 

「世界中で日本と同じ味をお客様にお届けすることが当社のポリシーです。従来は、日本で製造したシュークリームの生地を海外の店舗に輸送していました。しかし、今後の海外展開を考えたとき、コストなどの面からも現地での生産を考えなくてはなりませんでした。シンガポールの生産拠点で、ビアードパパ独特のサクサクとした食感の生地を製造できるようにすることで、コストを抑えながら日本と同様のおいしさを提供できるようになりました。アジアや中東、オセアニアの店舗にはシンガポールでつくったシュークリームの生地を届け、使用することになります」。

 

海外の生産拠点の候補には当初、マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイが挙がっており、シンガポールは含まれていなかったという。

 

世界展開のコスト減を実現する。生産・物流拠点のシンガポール

「シンガポールはあらゆる面でコストが高いという先入観がありましたが、実際は違いました。シュークリームの主原料である小麦は品質も日本で使用しているものと遜色なく、むしろよりいいものが政府が決めた価格で買わなくてはならない日本と比べ低価格で手に入ります。バターも関税率が高い日本と比べて、シンガポールの方が安い。さらに、通関機能がほかの東南アジアの国より優れ、透明性が高いこともシンガポールを選んだ大きな理由です。製品の輸出に当たっても、シンガポールが各国と結んでいる自由貿易協定(FTA)によって、国によっては年々関税が低くなり、ゆくゆくは撤廃されるという恩恵があります」。

 

ビアードパパは「いつもできたて・作りたて」をモットーに店でカスタードクリームをつくり、焼き上げる。シンガポールではブギスジャンクション、Nexセラングーン、そしてこの4月にクラークキーのセントラルに3店目がオープン。近々直営店の出店も予定している。

 

「MUGINOHO GLOBALには、ビアードパパのフランチャイズ店に製造と接客サービスなどのトレーニングを提供したり、商品開発のサポートをしたりといった役割もあります。しかし、日本の方式を押し付けるのではなく、現地スタッフの発想を積極的に取り入れて、現地化を進めたい。

 

世界各国へ進出をする上で、これまでは海外でフランチャイズ展開に関心を持つ方とミーティングを持つことも、日本がベースではなかなか都合を付けることができませんでした。その点、シンガポールに拠点を持つことで、アジアの国にいる方から連絡をいただいたら、翌日に会うことだってできる。ビジネスのスピード感を大事にして、5年後には海外店舗を現在の2倍、500店舗に増やすのが目標です」。