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鈴木大地氏、有森裕子氏来星 日本とシンガポール スポーツの発展に向けた課題と施策とは

シンガポール・日本外交50周年(SJ50)を記念し、スポーツを通じた両国のさらなる関係発展に向け5月2日に開催されたスポーツカンファレンスに出席した、鈴木大地氏と有森裕子氏。現役時代はオリンピックで輝かしい実績を収めるなどトップアスリートだった2人は、シンガポールと日本のスポーツ文化のあり方や、今後の関係発展に向け、どのような思いを抱いているのか。それぞれにお話を伺った。

web_IMG_7576-(2)日本とシンガポールで協力  健康寿命の延伸へ
スポーツ庁長官
ソウルオリンピック金メダル(背泳ぎ)
鈴木 大地氏

―シンガポールのスポーツ文化について、どのような印象を持たれていますか。

シンガポールはスポーツが盛んで、そのための施設も整っていますね。国民がスポーツに親しみやすく、良い環境だと思います。施設は空港からも近くて羨ましいですね。施設の維持・管理や運営のあり方については、日本も参考にしたいと思います。

 

―日本のスポーツ文化の優れたところについて、どうお考えでしょうか。

水泳の場合、日本は各地にスイミングクラブがあり、コーチが熱心に指導することで選手が育つ環境があります。シンガポールも施設が整った後は、指導者のクオリティを上げていくことが重要ではないでしょうか。日本から指導者を連れて来るなど、協力できることはあると思います。

 

―両国において、スポーツを盛り上げていくことの重要性についてはいかがでしょうか。

日本とシンガポールでは、それぞれ少子高齢化が進んでいます。こうした中、スポーツによって国民が健康を維持し、健康寿命(健康上の問題がない状態で、日常生活を送れる期間)を伸ばすことは両国に共通のミッションであり、課題であるといえるでしょう。お互いがどういう取り組みをすればいいか、いろいろ話し合いながら、健康寿命の延伸につなげていきたいと考えています。

 

―スポーツを通じた両国の関係発展について、具体的にお考えになっている施策は何かありますか。

両国に大きな時差がないのは利点といえるでしょう。季節差はありますが、逆にそれを利用して、日本が冬の時期にこちらでトレーニングをするといった形で交流を深めることができると思います。また経済的な関わりにも期待できます。こちらに進出する日本企業がスポーツのプロモーションも行い、さらに業績を伸ばすことができれば、スポーツの価値もより認められるようになるでしょう。シンガポールの企業にもスポーツを支援してもらうことで、両国で互いに協力しながらスポーツを振興させることができるのではないでしょうか。いろいろな人を巻き込み、スポーツ産業を大きくしながら、その価値を高めていくことが大事だと思います。
シンガポールが日本に何を求めているかしっかり聞きながら、今後もできることをきちんとやっていきたいと思います。

情操教育への関心高まるシンガポール  今後が楽しみ
バルセロナオリンピック銀メダル
アトランタオリンピック銅メダル
有森 裕子氏

―シンガポールのスポーツ文化についての印象についてはいかがでしょうか。

最初にシンガポールに来たのは随分前になります。周りからも「シンガポールでは一に勉強、二に仕事で、いい大学に行き、きちんとした仕事に就いて裕福に過ごすことが人生の成功例」と聞いており、スポーツは盛んではないなという印象がありました。ただ最近では、シンガポールでもスポーツやアート、音楽といった情操教育に関する関心が高まってきており、かなり状況も変わったのではないかと思います。これからスポーツ文化が大きく発展する可能性のある楽しみな国になってきたなと感じています。

 

―スポーツのさらなる振興に向け、両国の課題や展望についてどうご覧になっていますか。

シンガポールのスポーツ文化はまだまだこれからだと思います。国をあげて、小学校低学年くらいから、スポーツに触れながら成長していくことの重要性について認識を高めていく必要があると思います。日本の場合、スポーツをする環境はありますが、心身ともに健全・健康になるという本来の目的から外れてきているように感じています。アスリートの犯罪が増えたり、スポーツで体を壊す人が増えたりしており、そもそも何のためにスポーツをするのか、スポーツのあり方やスポーツをする人の生き方について、今一度教育が必要なのではないかと思っています。

 

―スポーツを通じた日星関係の発展に向けた具体的な施策について、ご意見をお聞かせ下さい。

今回のスポーツカンファレンスのように、いろいろな年代や層の方を対象にトークショーやシンポジウムを開催し意見交換することは今後も重要だと思います。あとは人材交流ですね。いろいろなスポーツ、種目を通じて指導者を日本に呼んだり、日本から派遣したりといったことが増えればいいのではないでしょうか。大人だけではなく、子供たちを取り込むプログラムを考えていくことも大事です。シンガポールにも素晴らしい環境や文化はあると思いますが、これから日本とのつながりを通じて、もっといろいろなことが学べると思います。また日本もシンガポールから学べることは多いと思います。シンガポールは、多国籍多文化が共存している国で多様性がありますね。多様性を認め合いながら何かをしていくという点で、シンガポールはとても優れているといえるのではないでしょうか。