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マーケティング編 第3回 本物のマーケティングの実践(1)最も大切な視点

マーケティングとはあなたがお客様の人生を守るための手段であり、その事実を理解しお客様の人生に本気で向き合えば、自分の仕事に携わることのできる幸せを心の底から実感できるようになります。そうすることで、お客様とも血の通った温かい繋がり、感動、絆が生まれていくということを前回のコラムでお伝えしました。

 

この話にピンときた方も、ピンとこなかった方もいらっしゃるかもしれません。しかしいずれにせよ、それを実践している人や企業はまだ多くはありません。私がこうした話をする時、「頭では分かるけど、現実的には難しい」といわれる方が多いです。その気持ちは分からなくもありません。「お客様の人生に本気で向き合う」ことは、実際、非常に手間のかかることです。お客様のことをより深く知ること、その本当のニーズを知ること、それに個別に答えること、これら全てに手間がかかります。

 

「そんなことをして果たして元が取れるのか?」と考えるのはビジネスマンとして普通のことかもしれません。結論は「取れる」のですが、なぜそれを難しいと考えてしまうのか、その理由を先にお伝えしたいと思います。

それは、お客様をモノとして見ているからです。誤解を生むかもしれませんが、それが事実です。

 

第1回で、売上や利益に焦点が当たっている企業は、表で何を言っていようと結局、お客様が求める商品ではなく自分達が売りたい商品を売り、自社の利益を捻出するためにお客様にかける経費を削減する、とお伝えしました。

利益の追求が行き着く最悪の結末は、企業不祥事です。以前日本で起こった焼肉店のユッケによる集団食中毒事件を覚えている方も多いと思います。あの事件がなぜ起こったのか。自社の利益のためにお客様の利益どころか、命さえないがしろにしてしまったあの会社は結局、お客様をモノとして見ていたということです。ここまで極端な例でなくとも、お客様をモノとして扱う企業は多く存在します。

 

利益を捻出するために多くの企業が取り組むことは、合理化とコストの削減です。これをどんどん進めていくとどうなるでしょうか。オリジナリティのある商品やサービスがどんどん削られ、だんだんと無機質な消耗品(コモディティ)になっていきます。そのプロセスのなかで商品だけではなく、お客様も消耗品、つまりはモノと化していきます。思いやりのある会話や個別対応が失われ、ベルトコンベヤーの上に乗せられたようにお決まりのシステムによって機械的に対応される感覚、つまり自分がモノとして扱われているような感覚を感じた経験をお持ちの方は少なくないでしょう。

 

当たり前ですが、人はモノではありません。モノとしてなど扱われたくはありません。だから自分をモノとしてではなく、人として扱ってくれる、大切にしてくれる場所を探します。その時、あなたはお客様に選ばれる存在になるのか、切られる存在になるのか。その選択はお客様の自由ではなく、あなたの自由です。どちらを選ぶかはあなたの行動次第です。

 

これが先ほどの「果たして元が取れるのか?」という問いに対する答えなのですが、「自分ならモノとして扱われたいか、人として扱われたいか」という極めて当たり前のことが、売上や利益に焦点が当たっていると見えなくなります。

 

ぜひ、あなたのお客様を人として接してください。人にはそれぞれ異なる人生があり、目標があり、あなたの元を訪れる理由があります。人は一人ひとり違うのだということ、誰もがそれを分かってほしい、大切にしてほしいと思っていることを忘れないでください。それを本当の意味で理解した時、あなたの仕事も人生も、もっともっと飛躍し始めるはずです。