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めざすは和食の大衆化。価格破壊と現地ニーズへの対応を徹底

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「シンガポールは日本よりも和食の価格が高い。食材を輸入に頼らざるを得ないことや、店舗家賃が高いことなど理由は考えられますが、このままの価格ではシンガポールのローカル一般大衆に本当の和食は浸透しないのではないかと考えています。。当社はコストダウンとバランスを図ることで、もっと多くのローカルの人に気軽に楽しんでもらえる和食を提供します」。

 

ジェイフォート事業統括本部長の松本尚さんは、昨年7月に設立した同社の目標をこのように語る。11月には第1号店としてオーチャードのウィスマアトリアにあるフードリパブリックにオープンうどんとてんぷらの店「五縁(ごえん)」をオープン。かけうどんを3Sドル台で提供する。また12月にはセルターモールにもうどん2号店を開店、今年1月20日にはビボシティに3号店をオープンする。3月には鉄板焼1号店をオープンさせる予定だ。

 

本来の和食にこだわらず地元客が求めるものを提供する

日本から食材を直輸入するために貿易会社も設立して経費を省き、設備投資の安価なフードコートに出店することで、手ごろな価格を実現した。今後も鉄板焼、ラーメン、お好み焼き、丼専門店などの店をフードコートや独立店舗で展開し、鉄板焼きでは日系鉄板焼レストラン最安値を、店仕込の豚骨ラーメンは10Sドルを切る価格で、丼も5-6Sドル台で提供する予定という。しかし、安さのみを追及するのではない。うどんは香川県から讃岐うどんを輸入し、できる限り既製品を使用せず手仕込み手作りでの味を表現し、フードコートの店でも日本人が調理するようにして和食の品質に配慮する。

 

一方で、柔軟さも持ち合わせている。

 

「当社のモットーは、『こだわらないのがこだわり』。フードコートのオーナー会社からのリクエストにもどんどん応えていきますし、味もローカルテイストに合わせていきます。第1号店のオープンに当たっては、日常的にフードコートを利用するシンガポールの人たちに試食をしてもらいました。その結果、コシが強いうどんは固すぎると言われ、冷たいうどんは『こんなの食べられない』と一蹴された。そして、とんこつうどんや明太クリームバターうどんといった日本ではなじみのないような味が大好評でした。更に今後はローカルの人々にもチャレンジしやすいようにトムヤムクンやバクテー等の味付けでのうどん提供も行います。和食の基本は守りつつも、こうあるべきと固執せず、海外では変えていかなければなりません。和食の繊細さばかりを追求すると失敗すると考えています。」。

 

松本さんは、飲食業のキャリアを日本の有名ホテルのフレンチシェフとしてスタートさせたが、その後は大手居酒屋チェーンで「女子会」ブームを仕掛け、格安店の展開を手がけてきた。そうした経験から、消費者、大衆のニーズを汲み取ることの重要性を強調する。そしてシンガポールは地元客のニーズをつかむことが難しい市場だと話す。

 

「シンガポールの人たちにとって、外食はおなかを満たすだけのものではなく、もっと大きな楽しみとなっています。そんな人たちに新しい楽しみを届けたいという思いがあります。しかし、この市場は日本から外食産業が進出し、成功するのに最も難しい市場の一つ。その理由として多民族国家でニーズが多様化していることがあります。そして食材は輸入しなくてはならず、いろいろなコストも高い。しかし、この市場で成功すれば世界のどこへ行っても勝てる。さらに、この食文化の多様性の中から、新しい味を創り出すこともできると思うのです」。