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ブランディング編 第2回 「愛され続けるブランド」づくりに必要なこと

前回はフォーカスする相手を決め、そこに「信」の旗を立てることからブランドが生まれるというお話をしました。今回はその「信」の旗の根本をより強化し、ファンから信者へ、愛され続けるブランドづくりについてお話しします。

 

まず、愛され続ける……個人に置き換えたらとても難しいテーマだと思います(笑)。しかしながら、前回紹介したように、日本には100年以上愛顧される企業だけでも2万社以上あり、お店や商品・サービスも含めると、さらに何倍ものブランドが存在する、老舗ブランドの宝庫です。なぜ、こんなにも次々と新しいものが生まれ、時代のニーズが変化する中でも長年愛され続けているのでしょうか。

 

例えば、架空の和菓子店が人気店になるプロセスを想定してみます。
①コツコツと販売していた自慢の商品が地元でおいしいと評判になり人気が出始める
②それに注目したテレビやインターネットなどのメディアが取り上げ、さらに話題になる
③エリア、ターゲットを超え、様々なお客様が足を運んでくれる
④それをメディアがさらに取り上げ、全国的なブームをもたらし、とにかく売れる
とても恵まれた状況ですね。しかしここで注意すべきポイントがあります。

世間が作り上げた流行・ブームというフレームの中に入ると、「今年流行りの○○!」と期間限定的な印象を作られ、一方的に寿命を設定される怖さがついてきます。年が明けるとそれは去年のもの、流行遅れと過去のことに押し込められる可能性があります。戦略的であれば別ですが、本意と異なる状況に流されかねない状態です。「メディアは諸刃の剣」とも言われる所以ですね。

 

そこでオススメなのは、場面ごとに「初心忘るべからず」というフィルターにかけることです。自分たちの「信」の旗はどこにあり、その旗は誰に何を示すものなのか。ここに違和感を持ちながら進んだ場合に生じるズレが、繋がっていた本命のお客様や、同じ思いで繋がっていた仲間が離れる原因を生んだりします。そのことをよく知る伝統ブランド、老舗ブランドは、メディアに対してとても慎重に向き合います。地に足をつけた、一時的な波に流されない、根の強さを持っておられます。そしてしっかりとフィルターにかけ、自分のたちの「信」の旗の確認作業をされます。

 

さらに意識しておくことは、世間が騒いでいることと、お客様自身が感じていることは違うということ。同じ口コミでも、世間が話題にする商品と、自分が信頼している人が話題にした商品は大きく違うということです。「信頼」が「信頼」を呼ぶ。「信頼」は繋がるということです。

 

そしてもう1つ大切なこと。それは、自分たちが誰よりも自分たちのブランドを愛するということです。愛すればこそ、磨き続けられます。会社を、社員を、商品・サービスを常に成長させたいと大切に磨き上げます。その愛情の量に、お客様は心を動かされ、惹かれます。そして自分たちに愛が注がれた時、ご愛顧で返してくれるのです。話題のブランドから、愛され続けるブランドへの架け橋ができる時ですね。社会を豊かにする本物のブランディングがなされた瞬間でもあります。

 

ここでも日本の誇りを感じることができます。何度も言いますが、日本は右も左も教科書だらけ、時空を超えたスーパーブランドの宝庫です。私自身、一緒にブランディングに取り組むクライアントさんとの会話も、「難しいテクニック論を考えるよりも、シンプルに日本人としての感性を働かせる方が大事ですね!」という結論にいつもなります。

 

特に機械的なサービスを追う時代が過ぎた今、「感謝から得られる喜び」の循環をもっとブランドパワーに生かしていければ最高だと思う日々です。