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「シェアード社員」がIT業務を遂行。中堅・中小企業を強くする新発想

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シェアードという言葉は知っていても、「シェアード社員」というのは聞き慣れない言葉である。今年5月、シンガポールに進出したユナイトアンドグロウ株式会社は、日本でIT業務を行うシェアード社員サービスを約300社に提供してきた実績を持つ。はたして同社のシェアード社員と人材派遣サービスとはどのような違いがあるのだろうか?代表取締役の須田騎一朗さんによると、シェアード社員はユナイトアンドグロウの正社員であると同時に、顧客企業先の現場で正社員よりも正社員らしく仕事をすることが、派遣社員との大きな違いだという。

 

「派遣社員は法律上の制約もあり、会社から与えられた仕事をするのが役目です。それに対し、シェアード社員は経営者の考えを理解し、経営者の視点を持って能動的に仕事をします。情報システム業務は会社のビジネス戦略にも深く関わってくる中で、経営者とIT業務をつなぐ役割をするのがシェアード社員の役割です。また、お客様から言われていないこと、気づいていないことにこそ重要なことがあります。そうした重要事項を見つけることが当社のシェアード社員の仕事であり、強みです 。

 

ユナイトアンドグロウが掲げる目的は、情報システムで困っている中堅・中小企業を助けること。ビジネスにおいてIT業務が関わってくる分野は拡大し、重要性を増しているが、IT担当の社員を雇うことは一部の大手企業を除いて厳しいという現実がある。さらに基幹システム、ネットワーク、ウェブサイト制作、スマートフォンアプリ制作、セキュリティ……など、IT業務は専門化・細分化されている。これらの分野の担当者を中小企業が社員として雇うことは難しい。

 

会社全体を俯瞰しながらマルチタスクで仕事をする

「このような状況から、多くの会社は外部にIT業務を委託します。この時点で経営者の方は選んだ業者が果たして最適なのかどうかもわからないことが多い。そして、ITの人材は特定の技術に特化したスペシャリストが多く、会社全体を見渡し、ほかのスタッフと情報を共有することの重要性を認識していないことがあります。一方、当社のシェアード社員はゼネラリストであり、マルチタスクで仕事します。建築に例えるなら、受注から基礎工事、設計、施工、内装、交渉ごともすべて考える。外部の業者に依頼するのが最善と判断した場合には、そのような提案をし、業者の選定もします」。

 

元々「日本で仕事をするドメスティックな会社で結構」(須田さん)と思っていたが、多くの顧客企業がシンガポールへ進出。これまでは日本から遠隔サポートで対応してきたが、やはりフェース・トゥ・フェースが望ましいということで海外初の拠点を当地に開設した。現在、シェアード社員1名が常駐する。他社で社員のように働くことが求められるシェアード社員は、ユナイトアンドグロウの社員としての意識が希薄になるのではと思うが、実際は逆のようだ。

 

「シェアード社員同士は横のつながりが非常に強い。問題に直面した時などは、シェアード社員同士が連絡を取り合い、解決策を見出します。このようにさまざまな会社での経験を蓄積し、共有することができるのも当社の強みです」 。