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1895年創業の老舗醤油メーカー、ハラル認証取得、シンガポール進出

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三重県伊賀市の老舗醤油メーカー、株式会社福岡醤油店が今年4月にシンガポールに進出、Hasamezu Soy Sauce SingaporePte Ltdを設立した。主力製品の「はさめず醤油」は創業当時から100年以上かけて染みついたもろみ、酵母菌が生きる木桶で仕込まれる。そしてもろみから生醤油を搾る際に現在では珍しい、テコの原理を応用した「キリン圧搾機」を使う。絞り過ぎることがないので余分な油分などが入らず、おいしい醤油ができるという。

 

Hasamezu Soy Sauce Singapore Pte Ltdダイレクター川向佐和さんは、「はさめず醤油」をはじめとする製品について、レストラン、個人の両方に向けた販売をめざすと語る。

 

「『はさめず醤油』は大量生産品ではありません。日本国内産丸大豆を使用し、ビン詰め、ラベル貼りまですべて手作業で、ていねいに製造しています。大豆の味、まろやかな風味、そして窒素を多く含むことで決まるうま味があり、複雑で奥深い味わいが特長です。業務用では日本料理店のほか、フランス料理や中華料理の店でも使っていただきたいと思っています」。

 

シンガポール市場向けに新商品を開発

福岡醤油店は昨年12月、日本のハラル認定機関である日本アジアハラール協会からハラル認証を取得。川向さんがアイルランド留学中、サウジアラビア出身の学生に出会って中東に興味を持ったことをきっかけに、「はさめず醤油」の海外展開を会社に提案したのがきっかけとなった。また、シンガポール市場向けの商品「Demi-Grace(デミ-グレース)」も開発した。

 

「『デミ-グレース』はとろみのあるソース風の醤油で、肉料理に使っていただくことを想定しています。以前にシンガポールで展示会を開催した際、こちらのバイヤーの方に醤油は塩辛いと指摘されたのを聞き、はちみつを使い甘口に仕上げました。とろみの成分として寒天を使っているので、食物繊維を豊富に含んでいます。シンガポール市場向けに開発した商品ですが、日本でも人気の商品となっています」。

 

このほかにも、ポン酢、レモン酢、レモンとゆず、シークワーサーのかんきつ類3種を使ったドレッシングなどがあり、いずれもハラル認証を取得している。

 

シンガポールに拠点を置く理由として、日本から製品を輸入するのに便利であること、東南アジアの中心地であることなどが考慮された。シンガポールから近隣の東南アジア、いずれは中東市場への展開を目標に据える。

 

「海外の営業先では三重県伊賀市から来たと言ってもわかってもらえません。しかし、『伊賀は忍者ゆかりの地』と言うと興味を持ってくれます。他県に比べると、三重県の農産品、食品の海外進出はまだまだです。予算や語学の問題など取り組むべきことは多いのですが、当社が海外進出を果たしたことで、地元の農産品の海外進出の機運を三 高めていきたいと思っています」。