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企業の東南アジア進出を支援し「社労士制度」の進展をめざす

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会社を経営するうえでの労務管理や、社会保険に関するアドバイスを行う社会保険労務士。この「社労士」は合格率約7%という難関の国家資格であり、日本独特の制度でもある。しかし、日本企業の海外進出が盛んになり、国境を超えてビジネスが行われるようになった今、労務管理や社会保険の問題は日本国内にとどまらなくなったといえるかもしれない。このような状況に対応し、社保険労務士法人 大槻経営労務管理事務所が昨年12月、シンガポールに事務所を設立した。

 

社会保険労務士の役割について、同事務所海外進出プロジェクト プロジェクトリーダー武澤健太郎さんは次のように説明する。

 

「会社と従業員の間に何かトラブルが発生した場合、裁判で最終的な決着を付けるのが弁護士の仕事です。シンガポールでは主に弁護士を立てて裁判で決着という場合が多いのではないでしょうか。一方、社労士はそのような裁判となる前に会社と従業員の間に立って相談に乗り、指導を行います。私たち社労士は在職中の従業員の方の相談に乗る場合も多く、トラブルを未然に防ぐ役割も担っています」。

 

日本で培った41年の経験を海外でも活かす

大槻事務所は41年目の長い歴史と500社の顧客企業を持つ。シンガポールに進出した理由として、顧客企業から東南アジア進出の相談を受けることが近年多くなったことを挙げる。

 

「日本で東南アジア進出をテーマにしたセミナーを開催すると、すぐに満席になるなど非常に大きい反響があります。また昨年、インドネシアから労働関係を管轄する省庁の方が私どもの事務所へ視察に来られました。インドネシアでは中間所得層が増え、人口ピラミッドがちょうど日本の高度成長期に似ているということもあり、社会保険制度や労務環境を整備したいという考えがあるようです。日本ならではの社労士制度について関心を持っていらっしゃいました。私どもにはアジアで社労士制度を広げたいという思いがあり、シンガポールでは会社名のローマ字表記にSharoushiと明記しています。いつかSushiなどのように英語としても認知されたらいいですね」。

 

大槻事務所がシンガポールで手がける業務は、日本の企業が東南アジアに進出する際の年金など各種社会保険の手続き、労災の特別加入、労務・人事コンサルティングなど。41年の歴史と500社の顧客企業との契約案件を通じて培ったノウハウを海外でも十分に活かし、労務管理サポートとアドバイスができるのが強みだ。

 

「労務管理、社会保険手続きを含めた、日本企業の海外進出支援を総合的なパッケージで提供できます。すでに当地でいろいろな会社とのネットワークを構築しつつあります。たとえ労務管理には関連のない案件でも、まずは当社に相談いただき、ビジネスマッチングなどでもお役に立つことができたらと考えています」。