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東南アジアの食肉需要を見込み、初の海外営業拠点を設立

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食肉やハムなどの卸売を中心とした事業を日本で展開するスターゼン株式会社(本社・東京都港区)が、昨年10月、シンガポールに営業拠点となるSTARZEN SINGAPORE PTE. LTD.を設立した。

 

マネージングダイレクターの相馬和宏さんは、「スターゼンが持つ米国、オーストラリア、デンマークの拠点は供給拠点です。シンガポールは当社にとって初の営業拠点となります」と話す。「当初はシンガポールで肉の卸売販売を手がけることを想定していましたが、日本やその他の国からの食肉を中心に扱う貿易の拠点としてのイメージが膨らんできました」。

 

シンガポールに拠点を置いた理由としては、アジアと世界から情報が集まる都市であり、金融や運輸のハブであること、インフラ整備や人材の充実度、ビジネスや生活面での安全性などが考慮された。

 

「食べ物に対する意識の高さも、シンガポールを選んだポイントです。あるアジアの国のウェットマーケットで気温30度の中、肉それも内臓肉さえも常温のまま陳列されているのを見て驚いたことがあります。その点、シンガポールのウェットマーケットに行くと、ちゃんと冷蔵施設を使ったり、氷を敷いて肉が並べてある。食べ物の安全に気を付けていることがわかりました」。

 

肉を売るだけでなく社会的な貢献を

シンガポールには食肉需要が高い市場としての魅力もあるという。

 

「旧正月直前にスーパーマーケットに行ったのですが、和牛を買い求める地元の方の行列ができていました。シンガポールは所得水準も高く、高級な和牛を買える人が多いということです。ただ、すでに日本の和牛と外国産のWAGYUが混在する現在のシンガポールの中で、さらにこれから当社も牛肉、というのはちょっと……。一方、ブランド豚などはおもしろいと思っています。おいしい豚は脂身が違う。本当においしい。鹿児島県阿久根市にある当社の工場で製造する鹿児島県産黒豚などは受け入れられると思います」。

 

シンガポールの拠点から、東南アジア近隣諸国への展開も見据える。

 

「東南アジアの国が経済成長するにつれて、消費者の食肉需要も高まってくると考えられます。今のうちに、先行投資的な意味を含めて東南アジアに進出をしたということです。日本の食肉を海外に売ることで、日本の畜産業に貢献することもできるでしょう。しかし、単に肉を売ることだけが当社の目標ではありません。例えば、日本の優れた畜産技術を東南アジアに紹介するなどして、現地の畜産業と環境の改善に役立ちたいと思うのです」。

 

日本の親会社では扱っていないことも、シンガポールでは事業とする可能性を探っている。

 

「今は船出して、まだ視界がぼんやりとしている状態。可能性をいろいろ探っていきたい。柱は肉として、魚を扱ってみたいとも思っています」。