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「TEAM日本」を強くするデジタルコミュニケーション

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Clisk Singapore Pte. Ltd.のCEOとして2012年9月にシンガポールに赴任した山根豪太さんは、日系企業と仕事をする中でショックを受けることがあったという。

 

「日本の企業が海外に進出するときは、しっかりマーケティングをしているものと思っていました。しかし、いわゆるマーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)のうち、Promotion(プロモーション)を考えることなく進出している企業が多いことに驚きました。日本での認知度にあぐらをかいているような気さえしました。例えば、欧米や韓国の企業はマーケティングに多額の予算を割いていますが、そのような相手に予算や計画という武器を持たずに、日本企業はいったい何ができるでしょうか?広告を出せば売れるのではなく、また良い商品を作りさえすれば売れるのでもなく、様々なことが複雑に絡み合っているのだと思います。もし成果を出せず、撤退となってしまうのであれば、それは非常に残念なことです」。

 

マーケティングと聞くと、一般に市場調査や宣伝・広告というイメージがあるが、山根さんの捉え方は違う。

 

「マーケティングは、市場調査や広告だけにとどまりません。商品開発、人材採用といった企業活動のあらゆることが、マーケティングに入ると思っています。消費者の視点に立った業務、消費者との対話に通じる活動はすべてマーケティングに含まれる、というのが私の考えです」。

 

無名の品でもウェブを通じ、消費者に浸透

ウェブマーケティング全般を手掛ける株式会社クリスク(本社・東京都)が2010年、タイのバンコクにClisk Co.,Ltd.(Thailand)を設立。アジア圏で引き合いが増えたため、域内市場を積極展開するために2012年9月、シンガポールに拠点を構えた。そして、現在はデジタルを軸としたマーケティング支援を行っている。

 

「ウェブ広告は得意とするところなのですが、あえて特化せず、『なんでもやります』というスタンスです。日本からこちらへ来る時、ある尊敬している方からなんでもやったほうがいいというアドバイスをいただきました。今まさにその言葉を実感しつつ、日本の企業が日本国内で展開する際のマーケティング支援、シンガポールに進出を考える日本企業や、シンガポールの企業の支援といったように、いろいろなお客様との案件に対応しています」。

 

1996年からインターネットにのめり込み、デジタルコミュニケーションの力を体験してきた山根さんは、中小企業にこそデジタルマーケティングが適していると語る。

 

「テレビで宣伝される大企業の大量生産品だけでなく、地方の小さな企業がつくる製品でも、ウェブで消費者とコミュニケーションがとれれば認知度を高めることができます。消費者の生の声を伝え、いいもの、いい技術、いいサービスを知るべき人に届けることができれば、企業規模に関わらず効果は出ると考えています」。

 

タブレット、スマートフォン、ソーシャルネットワーキングなど消費者の生活スタイルが多様化する中で、デジタルコミュニケーションが果たす役割はますます重要になってくる。

 

「日本では大手企業でも、デジタルマーケティングに振り分ける予算はわずか数%といわれています。もちろん企業によって業界の位置や戦略はあるものの、デジタルライフがこれほど浸透している現代において、デジタルコミュニケーションを駆使してこそ日本企業が、『TEAM日本』が強くなれると思うのです」。