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日本と世界をつなぐ仕掛けで携帯電話をもっと楽しいものへ

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コムサシというちょっと変わった社名の由来は、ウェブサイト制作やコンサルティングなどを手がける株式会社コムと、プラスチック用塗料で業界大手の武蔵塗料株式会社の2社。前者はコムサシのCEOである福井陽孝さんが東京理科大学4年生だった1996年に設立した会社、後者は福井さんの妻の祖父が1958年に創業し、50年以上の歴史を持つ会社。福井さんは、2010年にコムの株式の8割を売却して社長の座を退き、その翌年、シンガポールでコムサシを設立した。

 

ITで築いた人脈と、塗料事業とを結びつけるための模索

商用インターネットの黎明期からIT業界に関わり、大企業のウェブサイト構築や運用なども手がけてきた福井さんだが、塗料に関しては素人。IT業界で築いた実績や人脈と、塗料事業とを結び付ける何かができないか――その答えを模索しながら、シンガポールでの活動を開始した。

 

シンガポールを選んだのは、言語環境、生活環境などさまざまな面でのメリットに加えて、武蔵塗料の先代の社長であった妻の父との会話の中で、これからアジアでビジネスを展開する際に地域統括機能を置くのに望ましいビジネス環境を持つ国としてシンガポールが挙がっていたことも少なからず影響している。また、アジアには「インターネットの成長ぶりと同じ匂い」を感じている。

 

活動を始めて1年ほどは、日本からシンガポールへの進出を検討している企業のテストマーケティングなどを受託することが多く、さまざまなビジネスに関わった。あらゆる可能性を探るため、「基本的に呼ばれたらその場所へ行く」という姿勢で、アメリカへ行ったその足で中国に行き、マレーシアを訪れてシンガポールに戻ってくる、といったハードな旅程をこなしたことも。

 

各地に足を運ぶ中で出会ったのが、スマートフォンの画面テーマを丸ごと入れ替えられるサービス。企業のマーケティング支援などを手がける株式会社レッグスとの共同事業として推進する。「携帯電話は常に手元に置いて利用するもの。オリジナルのデザインに自分らしさを足したいというニーズは高い。さらに、昨年から展開している携帯電話ケース・カバーの販売事業や、携帯電話向け特殊塗料で高いシェアを持つ武蔵塗料の事業ともこのサービスは強いシナジーを持てる可能性がある、と考えました」。そう語る福井さんの頭の中には、現在さまざまな構想が浮かんでいる。

 

例えば、海外でも人気の高い日本のキャラクターを、携帯電話の画面テーマやカバーに使える環境を作り、世界中のクリエーターが関われる仕組みにできれば、現在のスマートフォン・アプリ市場のように急成長する可能性がある。先進国だけでなく途上国からもクリエーターが誕生すれば、その人々の所得向上にもつながるだろう。また、日本のキャラクターや技術が世界中の人の生活を良くするきっかけになれば、日本のためにもなる。

 

これから実現を目指しているビジネスが既に成功した夢を見た、という福井さん。正夢にすべく、その仕組みを3年で作ることを目標にしている。