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斜陽する日本のファッション産業を再活性化

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最盛期には23兆円の売り上げ規模があった日本のアパレル産業は、現在、半分以下にまで減ってしまっている。こうした中、「日本のファッションを世界へ!」と斜陽産業の変革を目指し、業界内企業への各種支援事業を行っているのがアパレルウェブだ。

 

業界向けにインターネットを活用した情報発信や各種サービスなどを提供。2000年に会社を立ち上げ、当初はアパレル各社のホームページ制作・運用を請け負うことから始めた。かつては難しいといわれていた電子商取引も今では急拡大。さらに業界向けのニュースなどを発信するほか、ソーシャルメディア、ブログ、アプリなど消費者とのコミュニケーションツールを活用したマーケティング施策を各種展開。現在、取引先は500社以上で、支援しているECサイトの売り上げの総額は年間200億円規模に膨らんでいる。

 

この1年間で急激に“おしゃれ熱”が高まり、この地の消費者が「傾きはじめているな」と実感しているのが、シンガポールに駐在し、海外事業を取り仕切っているアパレルウェブ取締役海外事業本部の田野好彦本部長(写真)。東日本大震災を機に日本のアパレル業界の経営者のマインドが変化しつつあり、海外売上比率3割を目指そうという企業が増えているなか、日本のアパレル業界の成長戦略モデルの確立へと勢い込んでいる。

 

シンガポールから世界攻略

同社の千金楽健司(ちぎらけんじ)社長は、多種多様に変化する消費者の需要に適応した商品を投入、独特の進化を遂げてきた日本のファッション業界事情に精通し、IT化の促進と輸出振興についての有識者としてファッション業界で広く知られる一人だ。過去には日本のファッションの輸出振興に携わる立場で経済産業省産業構造審議会競争力部会の委員なども務めてきた。

 

同社は中国消費市場の潜在性に目を向け、各企業の中国進出をサポートするため2005年、上海に海外初拠点を構えた。しかし、実際に中国に出店したアパレル10数社が雇用問題や労働問題など法制面の壁にぶつかって苦戦を強いられる惨状を目の当たりにし、3年前に撤退。その後、東南アジアのハブであり、アジア地域だけでなく中東や欧米諸国などにも情報が波及しやすいと判断し、2010年1月、シンガポールのデパートで原宿ファッションを実際に販売するイベントを行った。これが大きな反響を得たことから、海外にビジネスを広げる戦略拠点をシンガポールに置くことにした。

 

続けて翌年も開催した同イベントは、初日に1,300人が来場するなど大盛況となり、2011年、繊維の専門商社・蝶理と、みずほコーポレート銀行と共に、シンガポールで合弁会社を設立した。今後、日本のアパレルブランドの海外展開を支援していく。

 

近々、繁華街に複数の日本の服飾ブランドを取り扱う店舗を出店するほか、ネットショップも開設する計画だ。