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北海道産品の輸出拡大で、地元経済の底上げを

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北海道苫小牧市に本社を置く海運企業・苫小牧北倉港運がシンガポールに子会社「トラフィコノルテ」を設立した。海外進出は当地が初めて。北海道から赴任した新谷優一郎ディレクターは「北海道の物流は、輸入が多くて輸出が少ないというアンバランスな状態が続いているまま。長い間、低迷している道内の経済を活性化させたい」と熱を込めて語る。

 

日本の農業生産の大部分を担う北海道では、中長期的に見て国内需要が減少していく中、特に中国・東南アジアからの需要を取り込み、道内の主産業である農水産業を成長・発展させて行く必要性が叫ばれている。地域の海運企業である同社が先頭に立って、北海道の農水産物や加工品などの海外での販路を開拓し、海外への輸出を促進させることで生産量を増やし、北海道の第一次産業の構造改革を促す狙いだ。

 

生産者との架け橋になるべく、北海道の生産者にシンガポールへの輸出を呼び掛けている。消極的な人が依然として多い一方で、特に若手農業者などが積極的な姿勢を見せ始めているという。取引先とのニーズマッチングにも乗り出している。「弊社がパイプ役となって物流をサポートし、アジア地域において商材の出口を見つけるのが一番重要な役割と考えています」(新谷ディレクター)。シンガポールで足下を固めてから近隣諸国への進出を実現させていく考えだ。

 

輸送費の低減、野菜の宅配事業も構想

北海道産品の輸出量の拡大に障壁となるのが、シンガポールではオーストラリアやマレーシア、インドネシア、中国など近隣諸国からの輸入産品と比べて、日本産品の販売価格が高止まりしているという状況。そこで同社は、アジア地域への販路を自ら拡大することによって輸送量を全体的に増やし、輸送費の低減に向けて努力を重ねていくことにした。品質の良い北海道産品を、ローカルの人たちが買い求めやすい価格で提供できれば、フェアやイベントなどでの一過性の取り扱いだけではなく、地元のスーパーや小売店などで、レギュラー商品として通年での取引が見込めるからだ。さらにはシンガポールの消費者を対象に、北海道産野菜の宅配サービス開始を目指し、検討を重ねているという。

 

農水産物をはじめ、ワインや日本酒など食料品だけでなく「旭川家具なども、高度な伝統技術とデザインが欧米の人々から評価され、注目を集めている。ぜひシンガポールで普及させていきたいんです」と意気込む新谷ディレクター。北海道苫小牧市生まれ、根っからの道産子である氏が、シンガポールで巻き起こす新たな商流に注視していきたい。