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移転価格税制により関連会社へのサービスの提供に関する取り扱いがより厳密になっていると聞きましたが、具体的にどのような取り扱いが要求されているのでしょうか。

シンガポールの税法は、関連者間取引について独立企業間価格で為されることを原則としていますが、シンガポール内国歳入庁(IRAS)は、これまで関連会社へのサービスの提供や関連者間の貸付について厳密な独立企業間価格の適用に代わる一定の取り扱いを容認してきました。しかし、近年アジアの多くの国により移転価格税制が導入され、各国の税務当局間における相互協議や事前確認の件数が増加していることを受け、IRASは2009年2月23日に「関連者間貸付および関連者間サービスに関する移転価格ガイドライン」の通達を発行して、改めて関連者取引における独立企業間価格の適用を強調すると共に、これまで容認してきた代替的な取り扱いをより限定的な適用とし、その適用要件を明確化しています。

 

関連会社に提供されるサービスについては、上述のように独立企業間価格に基づいて請求することが基本ですが、IRASはこれまで専ら関連会社に対して提供されるサービスについて費用+5%を最低限請求すべきサービス料の目安としてきました。

 

通達では、これらのサービスに関して以下の要件を満たす場合には引き続き費用+5%を適正な利益による取引として認めるとしています。

 

 

また、シンガポールの会社が他の関連会社と共有して利用するサービスの費用をとりまとめて計上した後に各関連会社にそれらの費用を配賦する場合には、上記に加えて以下の要件を満たせばコストプールによる費用配賦として利益を上乗せせずに関連会社に費用を請求することが認められます。

 

 

その他、シンガポールの会社が他の関連会社に発生した費用を単に立替払いしたような場合には、利益を上乗せせずに立替金額をそのまま関連会社に請求することが認められています。

 

一方、シンガポールの会社が他の関連会社に無利子あるいは市場金利より低い利子で貸付を行うことについては、これまでは貸付会社に発生した支払利息について損金算入を認めないことにより容認されていました。しかし、2011年1月1日よりシンガポール国外の関連会社への貸付に関しては全て独立企業間価格による利子の徴収が要求されるようになりました。ただし、シンガポール国内の関連会社への貸付については、これまでと同様の取り扱いが引き続き認められています。