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業界動向

2005年1月31日

シンガポールの飲食業界動向

ここ10年でシンガポールのホテルやレストラン数は増加し、国民400万人の食に対する概念が少しづつ変わってきている。ただ東南アジアのビジネス、貿易拠点であるシンガポールの飲食業界は、70万人の外国人在住者や観光、国際会議や見本市の目的で訪れる年間600〜700万人に上る外国人旅行客の需要に支えられているというのが現状だ。
国内の飲食に関する変化はメディアの発展やIT革命により食に関連した情報が容易に入手できるようになったことなどが要因だ。

 
特に「ジャパンアワー」や「料理の鉄人」などのテレビ番組の影響で料理人のアイデンティティーが大きく向上し、社会的地位を確立した。
またインターネットの普及によって、日本を含めた海外情報の入手が容易になり、海外旅行で味わった本物の味を人々が追求するようになったことも飲食業界発展を後押ししたと考えられる。

 
さらに4・5年前からシンガポール政府が飲食産業発展に注力し始めている。
「フーデックス」や「フードエキスポ」などの食にまつわる見本市を毎年開催し、ヨーロッパ、アメリカ、日本などが早くから導入しているHACCAP(ハセップ=NASAが開発した衛生管理システム)を取り入れ、ホテル業や飲食業に衛生管理を義務付けている。
一昨年、新型肺炎(SARS)で大打撃を受けた東南アジアの観光業、ホテル業、飲食業界に対し政府が超低金利融資などの支援策を打ち出し、積極的に中小企業、小売店、飲食店をサポートしたことも記憶に新しい。

 
食への意識や関心の高まりを背景に、ホテルや飲食店は大きくクオリティーを進化させている。海外の著名な料理人の採用や海外で料理技術を習得し、帰国後国内で活躍する人が増えたことで料理や接客のクオリティーが向上しつつある。また、海外デザイナーや建築家による店舗設計やデザイン、当地のデザイナーの意識向上で、非日常的な空間で食事が楽しめる魅力的な場所の創造に力を入れだした。
このように、この10年で当地の飲食業界は大きな変化を遂げ、また今後も進化し続けるだろう。

 

しかし、こうした変化の中で一つだけいまだに変わらず、10年以上も改革意識が見られないことがある。
それはサービス精神。ホスピタリティー。
有名ホテルや著名な飲食店にもかかわらず、料理や店の雰囲気などとサービスのバランスが悪いと感じたことはないだろうか。つまり、斬新な店舗設計、デザイン、レベルの高い料理、雰囲気。しかし、そこに気持ちのいいサービスがない、愛情のこもったサービスがないと…。

 
シンガポールでは、接客やサービスを奉仕ではなく作業と受けとめている傾向があり、また「1 for 1」などの不適当なCS(顧客満足)活動で失敗や機能不全に陥っている例も見られる。
このような失敗の理由には、CS活動を行う前にしっかりしたES(従業員満足)活動が徹底されていないことが一因だと考えられる。
従業員が幸せに、また楽しく仕事をしているか、自分が豊かさや優しさを感じることができる環境がどれだけ整っているかなど、経営者が考慮することが必要だろう。
ESがあってはじめて従業員にCSという意識が生まれ、この意識こそが今後の飲食業界発展や、さらには飲食業界の社会的貢献の鍵となるのではないだろうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.030(2005年01月31日発行)」に掲載されたものです。

取材協力=Million Heart & Hospitality

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