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事業所の内装工事に関する支出について税務上の減価償却が制限されていると聞きました。どのような支出について控除できるのか教えてください。

事業所の内装工事に関する支出について税務上の減価償却(キャピタルアローワンス、以下CA)が認められるかどうかを知るには、まず支出の内容について詳細を吟味する必要があります。シンガポールの税法には、有形固定資産に認められるCAとして産業用建物に関するものと設備・機械に関するものが定められています。内装工事に関する支出がそのどちらに該当するのか、それとも何れにも該当しないのかを見極めなければなりません。

 

設備・機械に関するCAは広範な種類の固定資産に認められていますが、ここでいう設備・機械とは基本的に「事業を行うための道具として使用されるもの」であり、「事業を行うための器として使用されるもの」は設備・機械に当たらないと考えられています。この概念に基づき、内装工事のうち建物又は構造物と一体化しているものについては事業を行うための器の一部であると見なされ、設備・機械としてのCAが認められていません。

 

一般的な事務所の内装工事に関して設備・機械としてCAが認められる支出の例には、以下のようなものが挙げられます。

 

 

一方、以下のような支出は建物又は構造物と一体化していると見なされ、CAが認められる設備・機械の対象外となります。

 

 

但し、上記のような建物又は構造物と一体化したものに関する支出について、全く控除が認められない訳ではありません。

 

有形固定資産に認められるもう一つのCAである産業用建物償却(IBA)は、製造業等の特定の事業に使用される建物についてCAを認める制度ですが、その建物の一部を構成する内装工事についても同様にIBAによる償却が認められます。

 

また、例えばドアや照明を修理したり取り替えた場合の支出については、CAとしてではなく費用として控除することができます。

 

2008年度予算案の税制改正により、これまでCAが認められなかった内装工事に関する支出について、控除限度額を設定の上、3年間に亘る定額償却を認める措置が導入されました。更に、2010及び2011賦課年度(2009及び2010年終了会計年度)については、景気回復政策の一環として1年の加速償却が認められています。この制度は、現在のところ2008年2月16日から2013年2月15日までの期間に発生した支出を対象とする時限措置とされており、2009~2011賦課年度及び2012~2014賦課年度の3賦課年度についてそれぞれ累計S$150,000を限度として控除することが可能です。控除が認められる支出は、建物の構造的な変更に関するもの並びに設計・専門料、美術・骨董品を除く内装工事に関する支出とされています。設備・機械としてのCAが認められない支出の例として前述に挙げたものは全て、この制度により一般的に控除対象とされる支出の範疇に含められています。

 

このように、内装工事といってもその内容により控除の可否や適用される制度が異なります。このような支出が発生した場合にはなるべく詳細な明細が記載された請求書を入手しておくと、税務申告が容易になるでしょう。