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ビジネス体験・日本流とシンガポール流

2013年6月17日

上司の責任業務は“話は理論的にすっきり”

今回の話題は“察しの文化”対“話し合いの文化”です。

 

 

日本の社会で話し合い(ディスカッション)をする場合、ある種の目に見えない壁や自主規制があります。話し合うための会合を行うのは、何らかの問題があってその解決を図るためや、新しい事業を始めるためであったりします。会合では、出席者の地位、立場、あるいは主催する事務局が求める落とし所、目指している結論が絡んでくる場合や、話し合いの出席者に求められている役割が予め決められている場合もあります。出席者は、話し合いの中における自分の役割を暗黙のうちに理解・了承し、自分に与えられた役割をこなそうとします。

 

 

日本の会合でもう一つ特徴的なのが根回し。事前に参加者に対して意図、目的を説明して賛同を求め、結論に対する協力を依頼して会合前に了承を求めておくのは良くあることです。

 

 

日本の会合で多い問題点は、論旨が理論的でなく、事実関係、数字を入れない観念的な論旨/主張が多いことです。その場合は反論も観念的となり、争点がはっきりしなくなってします。それでも“KY”という言葉に代表されるようにその場の状況、雰囲気を理解しそれに合わせて行動する事が求められるのが日本の社会です。

 

 

それに対して、当地シンガポールの話し合いはしがらみもなく、理論付けられた論旨の展開でお互いの主義/主張を述べ、それに対する反論も事実/数字に基づく論旨が述べられます。感情論が入り込むスキはなく、観念的にもならず単純明快。解りやすい経過をたどります。この様な展開のため、結論への到達も早くなります。出席者の地位、立場に対して尊重はするものの、自らの主張に手心を加える事はありません。また、相手方も尊重されている限りにおいては相手に手心を加えて貰いたいとも思っていません。明快な論旨と論旨の交換で結論を導き出して会合を終了します。

 

 

この風潮は、話し合いのみならずシンガポール社会全体に行き渡っています。日系企業のシンポール事務所でも、ナショナルスタッフとは阿吽の呼吸、暗黙の思いやりは通用せず、はっきりと理路整然とした論旨で指示命令を通達しなければなりません。“適当に処理しなさい”とか“君に任せる”等の指示を出すと、ナショナルスタッフが混乱を起こし、結局は事務所内で大きな問題となってしまいます。“KY”と言う発想はシンガポールにはありません。また、シンガポールは上意下達の社会であり、部下に対して「うまく処理しなさい」という上司の指示は通常あり得ません。ナショナルスタッフが辞めていく大きな原因となってしまいます。

 

 

日本人の上司にとって、当地にてナショナルスタッフをうまく効率的に動かす秘訣は“話は理論的にすっきり”を心がけること。ナショナルスタッフが1回で理解できない場合は、さらに理論的に噛み砕いて説明することになります。これが当地での上司の責任業務となります。

 

 

今月のスナップショット

クレメンティ小学校の裏に広がるクレメンティ・ウッズの住人です。人間を警戒している目が実にリスらしい。逆光が程良くコントラストを与えてくれました。(写真:丸茂 修)

文=ケルビンチア・パートナーシップ法律事務所・丸茂 修

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.236(2013年06月17日発行)」に掲載されたものです。

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