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グローバル時代の戦略経営 - Globalization as Learning

2014年4月21日

Strategic Business Unit のポジショニング

海外現地法人のMDを経験された方が「自分の経験が役立つなら」と、お話を聞かせてくださった。日本企業によるグローバル進出がまだ今ほど盛んではない1990年代に、他分野で活躍していたキャリアをかわれ転職し、海外現地法人の経営をゼロから任され、アジアを舞台に新たなビジネスモデルを構築して結果を出した辣腕の経営者だ。今だからこそ面白おかしくエピソードを交え語ってくれた百戦錬磨の経験談には、グローバルビジネスをマネージする難しさと同時に、グローバルな市場・社会で新たな価値を創造するというエキサイティングなビジネスの魅力があふれていた。

 

 

昨年で現役を退かれたこの方にとって、「10年間勤めあげられたこと、目標をすべて達成し、会社の成長に貢献したこと」が成果だと控えめに語られる。しかし、その成果の背景には、自らのリーダーシップを理解し活躍してくれた部下、支えてくれる本社、外部の協力会社、そして現地社会でのさまざまな協力者といった多彩なステーク・ホルダーからなる、レベルの高いチームワークの存在と、彼らと共につくりあげ、実践した戦略があった。トップは、結果責任、つまり数字の達成に責任があるのは当然である。その数字を、そのまま部下におろすのではなく、いかに日常の活動において、メンバーの士気を落とさず、創造性を発揮できるようにマネジメントしていくか。そのときに大事になるのは、「ベースとなる共感をいかに創れるか、その共感を実感にしていけるかどうか」だと話された。

 

 

この言葉から考えさせられることは多々あるが、最も感銘を受けたのは、このすぐれた経営者の「ポジショニング」であった。海外現地法人のMDとして自分のポジションをどう認識して、行動されたか、である。この方は、「海外現地法人のMD」=「グローバル企業の1拠点の管理者」ではなく、「グローバル社会に貢献することによって、日本企業・日本社会のグローバリゼーションに貢献するStrategic Business Unitのリーダー」として、自らのミッションを認識されていたのではないだろうか。

 

 

単なる海外の1拠点の管理者であれば、日々の数字目標達成のために努力し、任期を無事勤めあげて本社に戻ることが自分にとっての成果となろう。任期という「期間限定」である。しかし、グローバルな市場・社会の中でリーダーシップをとろうとすれば、単に日本本社のグローバル戦略に従うだけではなく、ローカルな視点で事業を持続的に展開していくきめ細かな戦略が求められる。現地の多彩なステーク・ホルダー(単なる、利害関係者だけではなく)とのコラボレーションなしに、ビジネスの成功はない。部下も、コラボレーションを共に生み出すチームの一員である。この方は、共感と実感醸成に尽力することでコラボレーションができる環境を創り出し、そこから生まれる「共創の価値」をターゲットとする顧客に提供することができた。だからこそ、事業を成功させることができたのではないだろうか。

 

 

Strategic Business Unitというポジショニングは、海外現地法人のMD自身が、自らの仕事の場をそのように認識し、その視点に立ってグローバルなリーダーシップを発揮するという戦略的な意図(Strategic Intent)を持たない限り生まれないのである。

文=高橋秀紀(たかはしひでき/Scholar Consult Asia Pte Ltd 代表)photo1

日本で約30年の歴史を持つ組織風土改革を専門としたコンサルティングファーム、株式会社スコラ・コンサルトの代表も務める。Scholar Consult Asia 公式ブログでは、戦略経営について、チームワーク開発、リーダーシップ開発、事業戦略開発、事業システム・プロセス開発の4領域から情報発信している。

 

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TEL : 6823-1237

※この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.255(2014年04月21日発行)」に書ききれなかった内容・補足をご紹介しています。

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