シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPGlobalization as Learning ! Loca...

グローバル時代の戦略経営 - Globalization as Learning

2014年6月16日

Globalization as Learning ! Localization as Learning! 〜日本発世界へ、を実現する戦略とは

ある歴史ドラマを観ていました。舞台は戦国時代、織田信長が天下統一を目指していたころです。バテレンが地球儀を信長に献上しているシーンでした。「日本(ひのもと)はどこにあるのだ?」と信長の側近がバテレンに聞きます。バテレンが指した地球儀の日本を観て、その小ささに側近は驚きます。その姿に信長は、「日本(ひのもと)が小さいのではない。世界が大きいのだ」と。あくまでもフィクションのドラマのセリフですが、信長は、「地球の中の日本」の小ささを見ると共に、「日本の外の地球」の大きさを観ていたのではないでしょうか。「外から内を見る」(Outside-In)という視点と共に、「内から外を見る」(Inside-Out)という視点も忘れない。これは、グローバル時代に生きる私たちに、大きな示唆を与えてくれるように思われます。

 
「世界の中の日本」を現実的な「場所place」で見ると、信長の時代も今も、小さいことに変わりありません。しかし今は、「日本発で世界へ」が可能なグローバル時代です。地理的な「場所place」ではなく、想像を広げて「空間space」として「世界の中の日本」をとらえてみるとどうでしょうか。本社がある日本という「場所」から現地法人がある「場所」をマネジメントするのではなく、「地球社会という空間で」、日本で蓄積された資産をグローバルに展開することで、グローバル市場から学び(Globalization as Learning)、また、現地法人が現地社会へのLocalizationから徹底的に学び(Localization as Learning)、その学びを本社に戻すことで、GlobalizationとLocalizationによる学びが相乗効果を生み出して、より豊かで創造的なグローバルビジネスが展開される「空間」が無限に広がっていくのではないでしょうか。

 

 

先日、「日本発世界へ」という本社のグローバル戦略に対し、現地法人のマーケティングにLocalizationからの学びを最大に持ち込み、現地法人の実績を大きく伸ばしたAさんと話をする機会をいただきました。

 

 

Aさんは、アジアを中心に30年近い海外赴任を経て、今は日本に帰任し本社工場の生産責任者を務めています。会社は日本企業の中でいち早くグローバルに進出しましたが、その動機は日本市場の先細りではなく、自社が持つ優秀な技術を世界へ発し新たな市場創造をする挑戦でした。その証拠に、今でも日本国内では8割以上の販売シェアを維持しています。ところがグローバルでの挑戦をよそに本社工場は守りの姿勢が強く、そこに危機感を抱いた経営陣は、現地法人を大きく変えて伸ばしたAさんに、本社工場の変革を託したのです。そこでAさんは、帰任後一年は「変える」前に「見る」と決め、本社工場をじっくりと見続けました。そうして見えてきたのは、「現地法人よりも日本本社の社員の方が学ぶ意欲が低い」という姿でした。Aさんの言う「学ぶ」は、「勉強する」「知識を習得する」という次元ではなく、「ビジネスで新しい価値を創造していく挑戦」を意味していました。国内市場での好調が守りの意識を強め、新たな学びへの意欲を弱めているのではないか、という仮説を抱いたのです。

 

Aさんは現地法人にいた時代に、さまざまな挑戦をしています。その中の一つに、「本社工場が動かないのなら、現地で先をいく技術開発をしよう」というものがありました。日本から優秀な技術者や設計者を呼び寄せ、取組みました。結果は、というと、失敗です。
イノベーションは、優秀な技術さえあれば成せるものではありません。マネジメントやそれを支える暗黙の思考行動様式が複雑に作用し、絡み合い、結果、創造されていくものです。この失敗からAさんは、「本社だからこそできること」と「現地法人ができること」の違いを学び、その相関を戦略的に用いて現地法人ならではの挑戦にいかし、実績を伸ばしていきました。

 

現地法人しかできないことは、現地における学びからマーケティング課題をつかみ、事業を深化・進化させていくことです。日本本社がすべきは、グローバル展開する現地法人が現地から学びとった新たな価値創造の課題を統合し、グローバルな価値創造を展開していくためのマネジメント課題をつかみ、地球社会でのより大きな価値貢献を構想するグローバル戦略を描くことです。

 

ビジネスの世界では、これまで「学び」よりも「専門知識」が高く評価されてきました。これは、新たな学びの必要性が少ない、過去の成功パターンの模倣である程度は成功できるようなビジネスが通用してきたからではないでしょうか。しかし、成功パターンが加速度的に陳腐化する現在では、過去の産物である専門知識自体が同じように陳腐化していくことは明らかです。これは日本に限ったことではなく、著しい成長が見込めるアジア圏のビジネスではなおさらです。現地と共に学び、現地発で新しい価値を創造する“Localization as Learning”の姿勢で臨んでこそ、成長市場におけるリーディングカンパニーを目指すことができるのです。

 

Aさんは、次のように熱く語りました。「本社工場のグローバルにおけるポジショニングを明確にし、成長戦略を描くことは、過去の延長線上にはない未知の仕事。だからこそ、上に立つ者が率先して学ぶことでしか、社員の学ぶ意欲は復興しない」と。本社がグローバル戦略を描くとき、まさに“Globalization as Learning”の姿勢が求められているのです。

文=高橋秀紀(たかはしひでき/Scholar Consult Asia Pte Ltd 代表)photo1

日本で約30年の歴史を持つ組織風土改革を専門としたコンサルティングファーム、株式会社スコラ・コンサルトの代表も務める。Scholar Consult Asia 公式ブログでは、戦略経営について、チームワーク開発、リーダーシップ開発、事業戦略開発、事業システム・プロセス開発の4領域から情報発信している。

 

Level 58 Republic Plaza 9 Raffles Place S048619
TEL : 6823-1237

※この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.259(2014年06月16日発行)」に書ききれなかった内容・補足をご紹介しています。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPGlobalization as Learning ! Loca...