ご存知のとおりシンガポールは島国であり、60以上の島からなる。しかし、本島やセントーサ島は知っていても、ほかの島について知っている人や訪れたことがある人はあまりいないのでは?フェリーで本島と結ばれ、週末に気軽に日帰りで行ける島を紹介しよう。(取材・写真:時澤 圭一)
協力:Urban Development Authority / National Parks Board / Singapore Island Cruise & Ferry Services Pte Ltd
離島でシンガポールの奥深さを知る
現在シンガポール本島からフェリーで行ける主な島として、本島北東部チャンギの沖合にあるプラウ・ウビン(Pulau Ubin)と、セントーサ島の南に点在するサザン・アイランド(Southern Islands)がある。
プラウ・ウビンという名前はマレー語で島(プラウ)、花崗岩(ウビン)の意味で、1950年代には2,000人が居住し、花崗岩の採掘や農業、漁業に従事していた。だが花崗岩の採掘や農業は下火になり、2012年には人口が24世帯38人にまで減少している。一方で、現在はシンガポールに残る数少ないカンポン(Kampong:村)と呼ばれ、年間およそ30万人が訪れる。シンガポール政府は、プラウ・ウビンは自然に恵まれた素朴な田舎であり続けるべきとの立場をとっている。昨年3月には都市開発庁(URA)と地域コミュニティが協力し、環境保全と観光スポットとしての魅力について考えるプロジェクトが発足した。
サザン・アイランドの1つ、セントジョンズ島(St. John’s Island)は1819年にスタンフォード・ラッフルズ卿が当時のシンガポールの首長に会う前に停泊したとされる。19世紀には移民の検疫所などに使われ、20世紀中ごろには流刑地や薬物中毒者の更生施設として利用されたことも。そのような経緯を経て1975年、ビーチなどが整備され保養地として開発された。セントジョンズ島および連結するラザラス島への来訪者は2010年には2万6,000人だったが、昨年は4万人が訪れたという。
亀の島として知られるクス島(Kusu Island)もサザン・アイランドに含まれる。クスとは福建語で亀の意味。この名前は海で難破したマレー人と中国人の船員を大きな亀が島に姿を変えて救ったという伝説に由来しており、亀に感謝をささげるため島には道教の寺とイスラム教の聖廟(Kramat)が建立された。今でも旧暦11月にはおよそ9万人が巡礼に訪れる。
これらサザン・アイランドは長期的な計画に基づき、レクリエーションやレジャースポットとして一般客が気軽に訪れられるよう開発が進められている。
シンガポールといえば、真っ先にモダンな街並みと都会的な暮らしが思い浮かぶ。しかし、ちょっとフェリーに揺られて離島に行けば、私たちが普段生活する空間とは全く違う世界に触れることができる。これもシンガポールの魅力の1つであり、シンガポールが小さな都市国家であることを忘れてしまいそうだ。
面積1,020ヘクタール、サッカー場にすると1,400面以上の広さがあるプラウ・ウビン。チャンギ・ビレッジから小さな船に乗って約10分で行ける自然の宝庫では、カヤック、釣り、ハイキング、キャンプ、サイクリングが楽しめる。かつての花崗岩採石場(Quarry)跡などの見どころが点在する中、目玉は島の東端にあるチェック・ジャワ・ウェットランド(Chek Jawa Wetlands)。船着場からは3.4km、サイクリングと徒歩で片道約35分のところにあり、カブトガニやヒトデ、イソギンチャクなど多様な海洋生物が生息する自然保護区には桟橋や展望台、マングローブ・ボードウォークなどが設置されている。
チャンギポイント・フェリーターミナル所在地:51 Lorong Bekukong,
Singapore 499172(チャンギ・ビレッジ・バスターミナルから徒歩約3分)。
本島から6.5kmのところにあるセントジョンズ島には遊泳できるビーチやハイキングのための遊歩道が整備されている。ハタやベラ、トレバリーといった釣魚の大物を狙ってやってくる釣り人も多い。中には泊まり込んで夜釣りをする人も。セントジョンズ島に来たら、ぜひ足を延ばして行ってみたいのがラザラス島(Lazarus Island)。フェリー発着場から歩いて約15分のところにあり、クリアな水ときれいな砂浜は「シンガポール最後の手つかずのビーチ」と呼ばれる。家族や恋人と静かにのんびり過ごすにはピッタリの、知る人ぞ知るスポットとなっている。なお、セントジョンズ島、ラザラス島に店はないので、飲料水や食べ物は持参する必要がある。
セントジョンズ島から歩いて行けるラザラス島のきれいで静かなビーチ。セントジョンズ島のフェリー乗り場を出て左へ行き、セントジョンズ・コースウェイを歩いて15分ほどで着く。
面積8.5ヘクタール、サッカー場およそ12面の大きさのクス島。フェリー乗り場を出ると、緑の屋根に赤い外観が鮮やかな中国寺院が見える。この寺院には繁栄と無病息災、海上安全の力を持つ「Da Bo Gong(大伯公)」と「Guan Yin(観音菩薩)」が祀られている。さらに進むと丘の上にはイスラム教の神社(Kramat)があり、財産、良縁、健康、さらに子宝を授かりたい夫婦の願いが叶うと信じられている。そのほか、亀が集まるトータス・サンクチュアリなど、縁起がよさそうなスポットがあるのがこの島の特長。ビーチも整備されているので海水浴、ピクニックを楽しむこともできる。飲料水や食べ物は持参のこと。
写真提供:National Parks Board
今も手つかずの自然が残り、美しいサンゴやいろいろな海洋生物が棲息するシスターズ島はシュノーケリングやキャンプ愛好家に人気のスポットとなっている。フェリーの定期便はなく、手軽に行けるとは言えないが、チャンスがあればぜひ訪れてみたい島だ。
www.nparks.gov.sgから、「Sisters’ Islands Marine Park」で検索。