2026年8月17日
「アイスクリーム・アンクル」消滅の危機 高齢化で5~10年後には姿消す可能性
シンガポールの街角で、カラフルなパンやウエハースにアイスクリームを挟んで販売する「アイスクリーム・アンクル」が、今後5~10年で姿を消す可能性がある。高齢化する販売員の引退が相次ぐ一方、若い世代の後継者がほとんどいないためで、長年親しまれてきたシンガポール独特の街頭文化の存続が危ぶまれている。
現在営業を続けるアイスクリーム販売員の多くは60~80歳代。長時間の屋外勤務に加え、天候に売り上げが左右されることや、利益が限られていることなどから、若者が新たに参入する魅力が乏しいという。業界関係者からは「サンセット・インダストリー(衰退産業)」との声も上がっている。
街頭アイス販売は、オーチャード・ロードなどの観光地だけでなく、学校やHDB住宅地の周辺でも長年親しまれてきた。大きなアイスのブロックを切り分け、パンやウエハースに挟んで提供するスタイルは、シンガポールを象徴する懐かしい食文化の一つでもある。実際、2024年1月時点で、過去10年間に発行された街頭アイス販売の営業許可21件のうち、実際に使用されていたのは11件だけだった。
事業継承を難しくしているのが収益性である。伝統的な街頭アイスは手頃な価格が魅力で、大幅な値上げは難しい。一方で、原材料費や燃料費などのコストは上昇している。一般のホーカー業界でも食材や配送費などが上昇しており、政府は2026年、対象となる屋台に最大1,200Sドルの家賃支援を打ち出している。
シンガポールでは伝統的なホーカーの高齢化と後継者不足が広く課題となっている。政府はベテランの技術や店を次世代へ引き継ぐ制度を設けているものの、長時間労働や人手不足、コスト上昇などが参入の壁となっている。
安価なアイスを売るだけでなく、世代を超えてシンガポール人の思い出をつないできた「アイスクリーム・アンクル」。後継者を確保できなければ、街角でベルを鳴らす昔ながらの光景そのものが、近い将来失われる可能性がある。

