2026年6月4日
実質賃金の伸びで購買力向上 一方で製造業のジョホール進出は加速
シンガポールではインフレ率の低下と賃金上昇を背景に、労働者の実質賃金が改善し、家計の購買力が高まっていることが分かった。一方で、製造業各社によるマレーシア・ジョホール州への事業拡大も加速しており、企業はコスト競争力強化に向けた動きを活発化させている。
シンガポール人材開発省(MOM)のデータによると、2025年の名目賃金上昇率はインフレ率を上回り、多くの労働者の実質所得が増加した。これにより、生活費上昇の影響が一定程度緩和され、消費支出の拡大につながると期待されている。特にサービス業や専門職分野では人材需要が引き続き堅調であり、賃金上昇を支えている。
一方、製造業界ではジョホールへの投資拡大が続いている。専門家によると、ジョホールはシンガポールと比較して人件費や土地コストが大幅に低く、生産拠点として高い競争力を持つ。さらに、ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)の推進により、今後は両地域を一体的に活用する企業戦略が一段と進む見通しである。
業界関係者は、多くの企業が製造機能をジョホールへ移す一方で、本社機能や研究開発、財務管理などの高付加価値業務はシンガポールに残す傾向が強まっていると指摘する。このため、ジョホール進出はシンガポール離れではなく、地域全体の競争力を高めるための最適化戦略とみられている。
実質賃金の上昇により国内消費の拡大が期待される一方、企業はコスト上昇への対応を迫られている。シンガポール経済は今後、国内消費の底堅さと、ジョホールを活用した企業の成長戦略の両輪で発展していくとみられている。


