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政治

2025年12月5日

外国人パフォーマー就労制度乱用で廃止へ

 シンガポール政府は、外国人パフォーミング・アーティスト向けの就労許可制度「Work Permit (Performing Artiste) scheme」を、来る2026年6月1日をもって廃止すると発表した。制度は2008年に、バーやホテル、ナイトクラブなど公認の公衆娯楽施設が最長6ヵ月の短期で外国アーティストを雇用できるよう導入されたもの。だが、近年になって制度の広範な悪用が明らかになった。
 
 制度は当初、外国人の短期歌手/ダンサーらを対象とし、別の分野の非専門技能労働者向けパスと並ぶ「短期アサイン向けのWork Pass」のひとつであった。
 
 しかし、2024年から2025年にかけて、公演実態のない「シェル」娯楽施設を通じた不正雇用が相次ぐ。2024年9月には、全国での取締で32人が逮捕され、2025年9月には17人、さらに10月23日の合同捜査では58人が摘発された。そのうち32人は制度を使って雇われながら、無許可で実働していた外国人アーティストであった。
 
 加えて、制度の本来の目的――「短期興行のためのステージパフォーマーの雇用」――とはかけ離れ、ホステスなどへの形を変えた派遣・斡旋として機能するケースも目立った。たとえば、2018年にはある男が21人の外国人女性を「歌手」としてWork Permitを取得し、実際はKTVで月額1,800Sドルを払わせる斡旋を行い、有罪判決を受けている。
 
 こうした乱用が制度の趣旨を根底から揺るがしたため、関係当局はサービス提供会社からの芸能派遣、あるいは通常の労働パスによる雇用など、別の形を取るよう業界に促す。既存のパス保持者は、期限までそのまま働けるが、新規申請は停止される。
 
 制度の終了は、17年に及ぶ歴史に幕を下ろすことを意味する。政府は「システムの不正利用を放置すれば、労働パス全体の信頼性が損なわれる」と判断。娯楽業界の適正な労務管理と、合法的な働き手の確保を、あらためて促した。
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